誰の子守歌? [音楽]
チャイコフスキー/子守歌OP.16(6つのロマンスOP.16)
ララバイと呼ばれるが、『ゆりかごの歌』というのが原題のようだ。
もともとは歌曲で、ロシアの詩人マイコフの詩にメロディが付けられたものだ。
ボクは歌曲が苦手なので、チェロで弾いたものを聴いていた。
ここで紹介したのはそのどちらでもなく、よく知られているラフマニノフのピアノ用のアレンジです。
ラフマニノフ自身のおそらくピアノロールでしょうが独特のシャープで癖のある演奏です。
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ロシアの子守歌というのは母親がその微笑みと優しくやわらかい腕のなかに我が子を抱きながら口ずさむというような暖かいものは少ないですね。
グリンカもショスタコーヴィチもムソルグスキーも隙間なく編み上げられた厚い駕篭の中に寝かされた乳呑み児が、母親が暗くなるまで寒い大地で働く側の古木の枝に駆けられたまま風にゆられているような、丈夫一式でどこかもの悲しい風景を想像してしまうほど、哀しみを感じる旋律が多いです。
このチャイコフスキーの子守歌はラフマニノフのロマンティックなイデオムが、その手指の先まで同化してしまうほど抒情的です。
この曲はもう、ラフマニノフの作品と言っても誰も疑わないだろう程度に独特のピアニズムが発揮されています。
旋律を壊す一歩手前まで、音はロマンティックな分解をはじめ、溶け崩れる旋律は緊密なアルペッジョが見事に再生して組み立てられる。
複雑でロマンティックなピアノ曲となって耳に焼き付けられる。
この曲で眠れる子供は凄いんではないかなあ。
暗い大地の中で、哀しき調べを聴きながら眠る幼子に薄日以上の陽が優しく射し込んでいるようには思えなかった。
- アーティスト: マイスキー(ミッシャ),チャイコフスキー,ダルゴムィスキー,ムソルグスキー,ルービンシュタイン,リムスキー=コルサコフ,アレンスキー,キュイ,グラズノフ,ラフマニノフ,ギリロフ(パーヴェル)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/10/19
- メディア: CD
聴く側の私は、美しい!と感動しますが、こんなに切ない想いを頭の中で鳴らしている、芸術家って辛いですね。
by glennmie (2010-01-29 10:22)
オーベルニュの子守歌のような美しさではないですよね。でも、美しいです。間違いなく。
でも、何故美しいと感じたのでしょうか。その時の自分の精神状態や、健康状態、哀しみの中に美しさを拾い出せる感性の鋭さ、その時の気分によって長さの異なったアンテナを幾つも張り巡らしているその中のどの長さのアンテナに触れたのか…考え出すと一曲で何ページもの原稿用紙が埋まりそうですね。結局めんどくさくなって途中でやめてしまうのですが。
でも、作った人は結論までいっているんでしょうね。
ボクらはその結論を耳にしているのです。
少なくてもこの曲は問いかけたまま突き放すような現代音楽ではないんですから。 禅問答みたいになってしまいました。
by Mineosaurus (2010-01-29 23:28)