繊細な野蛮人 [音楽]
ベラ・バルトーク/アレグロ・バルバロ Sz49
聴き返してみると少し古くなったようで驚いた。
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年を経るにつれて、やはり少しずつボクの耳は更新されているのだろうか。
嬰ヘ調のアレグロはフランスでのコダーイとの演奏会のあとの新聞評によって、アレグロ・バルバロ『野蛮なアレグロ』と改題された。
この題名自体はヴァランタン=アルカンの練習曲にもあり、同じような叩きつけるようなダイナミズムを持った曲だった。
アルカンのは白鍵だけを使用する曲だが、バルトークのはそれとは少し趣を異にし、民族色の強い舞踏的な旋律が起伏に富んでいてアグレッシヴに繰り返される。
コダーイと共に『ハンガリーの若き野蛮人』の一人と称されたバルトークは皮肉にも非常に繊細な音色選択をする作曲家だけれど、ひとたび楽曲の構成にテーマを持つと表情ががらりと変わる。
生のままのローカリティではなく、そこから音として拾われた好戦的な舞踏音楽。
土色の仄暗い中に見据えられた純粋な目が音化され、透徹される。
音楽にはいくつかの創造に至る道があって、頭に響く旋律をホモフォニックに辿るものから、数式のようなイメージから音そのものの持つ色と艶を感性でポリフォニックに組み合わせてゆくものまで様々である。
バルトークはその両極端ではないけれど、持っているものの質は理性的な音楽ではない。
ベートーヴェンがもし、1911年まで生きてハンガリーの民族音楽を聴き、この嬰ヘ調のアレグロを聴いたとき『野蛮』という表現をするだろうか。
同じ鍵盤楽器の眷属が産み出す異なる奏法。
自分とは異なるミューズに見いだされた才能を感じるのではないか。
ゾルタン・コチシュの録音も 良いテンポなんだけど、バルトーク本人のがやっぱり抜けています。
少し雑音が入っていて、レンジが狭いけれど、まだ、ボクはこれでいい。
Bartók: Piano Concerto No. 3; Three Burlesques; Allegro barbaro; Suite, Op. 14
- アーティスト: Bela Bartok,Janos Ferencsik,Hungarian State Symphony Orchestra,Dezso Ranki
- 出版社/メーカー: Hungaroton
- 発売日: 1993/04/29
- メディア: CD
バルトーク:「ミクロコスモス」(選集)/15のハンガリー農民歌/他
- アーティスト: バルトーク,バラーシュ・ソコライ(p)
- 出版社/メーカー: ナクソス
- 発売日: 1993/05/01
- メディア: CD
Prokofiev: Piano Sonata No. 9; Bartok: Sonata; Folk Rondos; Allegro Barbaro
- アーティスト: Sergey Prokofiev,Bela Bartok,Joseph Kalichstein
- 出版社/メーカー: Vanguard
- 発売日: 1999/10/12
- メディア: CD
コチシュのCDを聴いて魅了され、自分でも一生懸命練習したことがあります。
キース・エマーソンがEL&Pのファースト・アルバムでムーグ・シンセサイザーで弾いていて、それもかっこいいです。
by glennmie (2010-03-03 03:51)
コチッシュはレパートリィが広いですね。バルトークに関して彼は間違いなくゲーザ・アンダの後継者です。
by Mineosaurus (2010-03-03 07:20)