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スウェーデンのピアノ協奏曲 [音楽]

ステーンハンマル/ピアノ協奏曲第2番ニ短調 op.23

第1楽章 モデラート~アレグロ・モルト~エネルジーコ
第2楽章 スケルツォ:モルト ヴィヴァーチェ
第3楽章 アダージオ
第4楽章 フィナーレ

piano01.jpg  ヴィルヘルム・ステーンハンマルという作曲家はスウェーデンではフィンランドのシベリウスのような評価を受けている作曲家だ。
彼の作風は1910年辺りを境にして、新ドイツ楽派的な重厚な音楽から淡い色彩でありつつ緊密なドイツ的技法の構築の中に民族的旋法を高度に昇華した、非常にクオリティの高い作風となっている。
一説には彼をドイツ的な重厚なロマン派的曲作りから、スカンジナビア風のシンプルでありながら説得力のある音楽へと刮目させたのは、親友であったシベリウスやニールセンの影響があったとされている。
彼の音楽は解りやすく崩れにくいポリフォニーを真に据えて柔らかだけれど靱いフレキシビリティを持っている。
交響曲第2番が同郷同世代の音楽家であり画家であったヒューゴ・アルヴェーンの交響曲とともに北欧のシンフォニーの頂点といえる。
ただ、アルヴェーンが専らシンフォニストとして管弦楽中心の作曲家であったのと異なり、ステーンハンマルはあらゆるジャンルに作品を残している。
民族楽派とよく言われるが、そこに共通するのはその国の風土風景が音楽によって想起されるところに大きな特徴があるのであり、その国の人達にとっては全て『我が祖国の歌』であり、1音から国を感じる音色なのだろうと思う。
便利な言い方だけど、十把一絡げには決してならない音楽である。
このピアノ協奏曲第2番は彼がドイツ音楽の美意識と訣別する前夜の上昇しきった部分からひらひらと舞い降りて人の背丈まで降りてきた、優しく親しみやすいまるで歌そのもののような旋律を明白なポリフォニーの上に構築している。
そして交響曲のの中でみせる巧みな管弦楽法を協奏曲で発揮しようなどという気はさらさら無いようだ。
第1楽章のモデラート。アインガングの後の弦楽のアタックにドイツロマン的な厚みを感じさせるが、ピアノが素晴らしくメロディアスで管弦楽とのめまぐるしい交替の後明晰で重層的な音楽が展開される。
そして、ピアノは常に頭一つ抜けた高みを疾走しては振り返る。
混然とならず凛として独歩する。
第1楽章の構築された塔の階段螺旋階段を上りながら塔の内壁に描かれた絵を眺めながらぐるぐると登って行くように、合理的な装飾が施され、その壁画自体のロマンティックな古風を何度も新しいもののように感じさせてくれる。
唸ってしまった。
第2楽章はスケルツォとなっているがモルト・ヴィヴァーチェの舞踏的なリズムに夾まれた中間部は第3楽章の歌に続く。まるでレチタチーヴォのような役回り。
そして、美しくドラマティックに歌い上げられるアリアである第3楽章は白眉。
当然ボクはこの部分を紹介するんだが、前後の楽章があってこそなのでどこまで感じきれるかだなあ。
木管楽器の使い方は凄くいい。




楽章は途切れず次第に高められた歌は歌いきった部分からフィナーレへなだれ込んで行く。
そこでは朗々とファンファーレが様々な楽器に受け継がれつつ高速ですれ違うようなピアノとの交錯の中で浮き上がるテーマが祝祭的に鳴り響く。
それにしても管楽器が鋭く鳴るのではなく、歌うように吹奏される部分が地味だけれど、新鮮この上ない。
最後の金管がテーマの旋律を高らかに歌い、ここはもの凄く映える。
初めてニールセンを聴いたときの『ああ、こう来るか!』的な爽やかな感覚が沸き上がってきた。
もし、生で聴き終わったら一斉に『ブラヴォー』の声がきこえそうな感じだ。


Wilhelm Stenhammer: Piano Concerto No. 2;

Wilhelm Stenhammer: Piano Concerto No. 2;

  • アーティスト: Wilhelm Stenhammar,Neeme Järvi,Gothenburg Symphony Orchestra,Cristina Ortiz
  • 出版社/メーカー: Bis
  • 発売日: 1992/10/26
  • メディア: CD

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コメント 2

kontenten

ステーンハンマル・・・2006年、新田ユリ指揮、アイノラ交響楽団の演奏で
聴いた事がある作曲家でしたが・・・曲名を失念してしまいました(><)
師匠(会社の部長)の情報では・・・シベリウス交響楽団第6番は
ステーンハンマルさんに献呈した曲だそうです^^;Aアセアセ
by kontenten (2010-04-15 12:37) 

Mineosaurus

kontenten さん:コメント有り難うございます。多分交響曲第2番辺りの演奏ではないでしょうか。彼は4曲くらい書いていたと記憶しています。確かにシベリウスは第6番をステーンハンマルに献呈していますね。ピアニストとしての彼に対してではなく、作曲家としての彼に献呈したものでしょうね。このステーンハンマルや同郷のフランツ・ベルワルドは本国での復権を果たしたところですので、日本でも聴く機会が多くなると思っています。特にこの二人は面白いです。
by Mineosaurus (2010-04-15 23:18) 

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