シャルヴェンカ-兄のピアノ五重奏曲 [音楽]
フィリップ・シャルヴェンカ/ピアノ五重奏曲ロ短調 op.118
第1楽章 アレグロ マ ノン タント マ エネルジーコ
第2楽章 アダージオ コン インティモ(心からの) センティメント
第3楽章 モデラート - フィナーレ:アレグロ
大変完成度の高い音楽。
フィリップ・ルートヴィヒ・シャルヴェンカはピアノ協奏曲や独奏曲で最近名前が知られてきたクサヴァ・シャルヴェンカの実兄。
弟ほど作品は多岐に亘るわけではないが、室内楽に聞き逃せないものがある。
晩年の作品は弦楽四重奏曲やピアノが参加したこの作品などちょっと渋いものが多い。
決して想像の翼が自由に天翔けるような、行間が生きている作品ではないけれど、非常にバランスがとれている。
ピアノ五重奏曲という分野はそれほど古今の作曲家が多く手がけた分野ではない。
それでも、名だたる作曲家が一作は残している。
この分野にはあまり深みがあるわけではない。
ピアノが加わっただけで弦楽四重奏曲からかなり表現が具象性を帯びる。
旋律の美しさが心を捉え、それは他の楽章の完成度と相まって何度も繰り返し聴くことになる。
ポーランドとドイツ音楽が混ざり合ったような間と強さと仄暗いロマンティシズムに溢れている。
でも、決して粘らなくて、基本的にはメロディの秀逸で全楽章を統一している。楽器感のバランスは美しく、ヘッドフォンをして聴くと前後の楽器感のやりとりの細やかさが際だつ。
どの楽章も美しい。
特に第3楽章は第2楽章のインティモ・センティメントを引きずった固有の序奏を持ち、非常に綾の細かい弦楽の疾走感とピアノパートの協奏的なやりとりがいい。
でも、YouTubeでは第2楽章のみ聴くことができる。
この楽章はホントに綺麗でセンチメンタルな音楽です。
ポーランドの音楽家にはショパンを例に挙げるまでもなく、音楽の中に込める先天的な詩的なスタイルがあるようで、それをたたき割ってなお推進するような荒々しい音楽がないけれど、国民性なのかも知れない。
音楽の世界が完結していて磨かれている。
そこを前に一歩踏み出したのは同じピアノ五重奏曲を残したザレンプスキだけれど、残念ながら彼は31歳という若さで天に帰った。
この第2楽章はただただ美しい。
解釈とか言うことを必要としない感性の慰撫がある。
これもひととき疲れた頭を休めるための時間をかけられる贈り物です。
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by NO NAME (2010-04-19 12:20)
Mineosaurusさんのブログを訪問続けるにつれ、どんどん音楽史が広大になってきますし、また学校教育での音楽史は、未発達な面が多いんでしょうね。
民族文化交流などを盛んにやっていけば、世界平和へむけ一輪でも花を手向けることもできるのに・・・。
頂いているポーランドの音楽やこの前のスペインの音楽然り。外交という堅い言葉ではなく、外国との交流と和らげた大きな国策があってもいいのに。
by matcha (2010-04-19 18:37)
matchaさん :ボクらは典型を教えられてきたに過ぎないんですね。そして人の一生は限りがあり、全てを学べないし、全てを聴くことができない。数百年に亘る音楽の歴史の中にバッハもモーツァルトもベートーヴェンも一人だけですが、歴史の中で選択され、ふるいに掛けられ、無理解に晒され、次の新しい感性に触れられることなく眠ってしまった音楽家達。彼らもそれぞれただ一人なのでした。
by Mineosaurus (2010-04-19 22:17)
深いですね。
でも、古い時代から新しく一人一人ライトアップされていくのを、拍手をもって迎えたい。そして、今までうわべしか知らなかった近辺の作曲家の曲に新たな光が見える、そんな気がします。
また、音楽にまつわる、いい話をお聞かせください。有難うございます。
by matcha (2010-04-20 13:24)