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重い音楽 [音楽]

piano01.jpg ブリッジ/ピアノのための室内協奏曲ニ短調H49a

どうやらこの曲のベースはブリッジのピアノ五重奏曲のようだ。
当然弦楽部が厚くなりこの曲の重厚な構成感がより明瞭になっている。
そのかわり弦楽部分の独自の前衛性が薄められ、ロマンティックなピアノパートと相まって非常に聴き応えのある音楽になっている。
でも、これはどうやらオーケストレーションについては他人の手によるものらしい。
愛弟子のベンジャミン・ブリテンはこの七色に変化する師匠の作風を忠実に把握した見事な編曲をいくつか見せているが、この作品はブリテンの編曲でもないようだ。
ホニャ訳してノーツを読んでいると、どうも編曲はコンスタンティン・オルベリアンと言うロシア人であるようだ。
どちらにしても原曲の素晴らしさと、再評価されたブリッジの独自の前衛性を現代の一歩進んだ感覚で20世紀初頭の枠にとどめている。

第1楽章 アダージオ
第2楽章 アダージオ マ ノン トロッポ
第3楽章 アレグロ エネルジーコ

YouTubeでは全曲が聴けるけれど、楽章を4つに分けているので変だと思ったが、ⅠとⅡが第1楽章ということらしい。
非常に説得力のある編曲で原曲の雰囲気にさらにオケに対応するピアノの太く残響の長いソノリティが生きていて見事に洗練されている。音楽全体が深く見通され、弦楽四重奏のパートに割り当てられた楽器をより広く割り振り、ピアノの堂々とした低音に互した破綻のないフォーマットが素晴らしい。
ブリッジ自身のピアノと管弦楽のためのファンダズムが鋭利な近代性の中で独自の不安定な和音が突っ走ってゆく傑作が時折感じさせるラヴェルやバルトークの匂いをここでは全く嗅ぐことはできない。
ただただ原曲の持つエッセンスであるマッシヴでフレキシブルな構成を生かされ、テーマの抒情性が美しい弦楽の総奏に写り込み、あっという間の30分を過ごさせてくれた。
イギリスの音楽がヴォーン・ウィリアムスやホルストによって民族色の強い大衆性を帯びていた時代、この作曲家は異才ブリテンを見いだし、自らも様々に作風を変化させながら、グスタフ・マーラー亡き後の近代ロマンティシズムと前衛性へのノブを決然と回しきって外に出た。
既に再評価が高いけれど、それを改めて認識した。


第1楽章途中まで 

 





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コメント 4

glennmie

ピアノがストリングスの向こう側にいますね。
オブリガート・ピアノと言いたいような不思議な存在感。
そこが五重奏曲ということなのでしょうか。
すごい音の洪水なのに息苦しく聴こえないのは、煙や水のように音楽が揺れて漂っているからでしょうか。とても美しいですね。

素敵な曲を紹介してくださり、ありがとうございました。
by glennmie (2010-05-13 08:59) 

Mineosaurus

これは本当にいい曲です。もっといろんな演奏で聴きたい曲なのですが。
by Mineosaurus (2010-05-13 21:45) 

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by 過去最高記録更新中!何もしないでなぜ儲かる!?秘密の方法を限定公開中。今すぐクリック! (2010-05-14 11:24) 

yukikaze

ピアノが効果的に聞こえてくる重厚感のある楽曲ですね。じっくり聞かせていただきました。
by yukikaze (2010-05-15 19:52) 

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