響きの向こうにあるもの [音楽]
メトネル/おとぎ話op.20第1番変イ短調
この時代を代表するピアノ音響芸術の結晶。
近代のピアノ・フォルテが広大なオクターブを歪みなく再現できる性能を獲得し、ピアニストが響かせたい音色と空間にあった音の深さと広がりを作品の求める、あるいはその再現者であるピアニストが求める音の厚みと広がりのほとんど全てに対応できる楽器。
これを駆使して作曲された19世紀末から20世紀初頭の作曲家兼ピアニスト達の演奏は記録が残っているだけに現代では再現しやすい一面を持っている。
しかし、どうしようもないものがある。
それは作曲家がその作品に許容した変容の幅を再現芸術家が知り得ないと言うこと。
ピアニストはありあまる演奏技術の高さを持ちながら素足で歩く原住民と同じ一本の道を歩いてゆくしかない。
細い道の左右には批評や聴衆の嗜好などという地雷原が広がっている。
高級な靴を履いていようが、裸足であろうがそこに踏み外せば爆発する。
数限りなく埋まっている感性の地雷原を独自の道を見つけて歩く離れ業ができるピアニストは希有である。
こんな短い作品の中に詰まっている響きの要素。
そこに広がる標題の枷の中で広がるイマジネーション。
イマジネーションにふさわしい音色と硬さを生む指と鍵盤の接触角度。
ペダルにかける創意。
チャレンジするにはもってこいうの作曲家。
ラフマニノフほどの音楽の大きさはないけれど、骨格が重く、太く、同量の質量を感じさせるメトネルの響きの向こうにあるものをしっかり掴んだ演奏はあまりお目にかかれない。
決して凄い演奏である必要はない。
その作品の大きさと、それにふさわしい響きの醸すイマジネーションをしっかり伝えてくれるのであれば。
Poems & Fairy Tales: Piano Music by Medtner & Scriabin
- アーティスト: Nikolay Medtner,Alexander Scriabin,Irina Feoktistova
- 出版社/メーカー: MSR Classics
- 発売日: 2009/03/10
- メディア: CD
Medtner: Violin Sonata No. 3; Three Nocturnes; Fairy Tale
- アーティスト: Nikolay Medtner,Paul Stewart,Laurence Kayaleh
- 出版社/メーカー: Naxos
- 発売日: 2007/08/28
- メディア: CD
Medtner: Fairy Tales/Short Pieces
- アーティスト: Nikolay Medtner,Hamish Milne
- 出版社/メーカー: CRD
- 発売日: 1977/01/01
- メディア: CD
メールのお返事をありがとうございました
ご好意ありがたく頂戴いたします。
これからも頑張ってください。
by koichan (2010-05-27 20:47)
ご訪問とnice!をありがとうございました。
きなこちゃんの記事、読ませていただきました。
私、本当にお空の上から見てると思うんですよね。
人でも動物でも、私と関わってくれたみんなが。
by 雅子 (2010-05-29 22:45)