梅雨の晴れ間の夜に [音楽]
梅雨の晴れ間の夜に
何日か朧なリングを纏っていた月が今夜はクッキリと群雲の中に浮かんでいる。
隣の家のブロック塀で昼間の暑さにヘタれていた黒猫が幅の狭いブロック塀の上からだらりと長いシッポをたらしたままじっとボクの部屋を覗き込んでいる。
シッポの先がくりくりと動いていて、しなやかな体のリラックスに反して全身の緊張がシッポの先と両耳の先にひりひりしている。
ボクが少しでも窓に近寄れば、いつでも塀の向こう側に飛び降りられる。
そう考えているようで、不用意に逃走距離を用意せずにボクのエリアに入ってしまったのはやはり昼間の暑さから解放されたくつろぎが生んだ油断だったのだろう。
冴えた月は涼しい風の中で何度も雲を着替えながら一度もボクの視界から消えない。
その間もずっと繰り返されるピアノの音はブリテンの小品。
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シンプルな音階が繰り返されながら、気分は深くも浅くもならず、音そのものの持つリリカルで澄み切った振動が寄せては返す。
1音に寄せた固執が即興的に繰り返され、易しく流れたリズムが突然立ち止まる。
つっかえた思いを吐き出すように一断高くなった歌が再び流れた後は月が低くなったように影は濃くなる。
1940年の作品だからこれは現代のピアノ曲といってよく、映像があればBGMのようなものになる。
でも、音から聞くものの頭に浮かぶイメージはもっと変化し続ける。
ベンジャミン・ブリテン/ピアノフォルテのための夜想曲(1940年)
Britten: Holiday Diary, The Music for 1 and 2 Pianos
- アーティスト: Benjamin Britten,Stephen Hough,Ronan O'Hora
- 出版社/メーカー: EMI
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: CD
静かなひとときを、この曲と珈琲で、ブレイクタイムを楽しみたいです。
by matcha (2010-07-07 15:31)