SSブログ

傑作とは言わないけれど… [音楽]

pf3.jpg

ジォゼッペ・マルトゥッチ/ピアノ三重奏曲第1番ハ長調op.59

第1楽章 アレグロ・ジュスト(適切な)
第2楽章 スケルツォ:アレグロ・モルト
第3楽章 スケルツォ:アンダンテ
第4楽章 フィナーレ:アレグロ・リゾリュート(決然とした)

1882年の作品。
オペラ偏重のイタリア音楽界にあってこの人は器楽音楽にキャリアの大半を費やしている。
8歳でピアニストとしてデビューし、19歳の若さでツァーを成功させている。アルフレッド・ピアッティとのチェロの協演の中ではロマンツェのような優れた小品が生まれ、そのチェロに対する技法の造詣は、この三重奏曲にも生きることになる。
彼は例によってイタリアを代表する作曲家達が歌劇を扱った大家であったために、少なくとも、ボクらフツーの音楽教育を受けたものの耳には触れることはなかった。
大家と言われる人々、バロックから近代まで網羅された音楽家達の残した作品にも、作曲家の名前によってかろうじてカタログに残るものも多い。
でも、そんな作品を聴くならば、ボクはこういう作品を聴く時間を作りたい。
第一楽章冒頭に顕れる主題の逞しさ。チェロの幅広い音の流れに乗ってピアノに移ってゆくテーマがヴァイオリンに継がれてゆく部分はとても素晴らしい音楽の始まりを予感させる。
シンプルな旋律の綾が淡い部分から適度な強さで入ってくるピアノと軽妙に溶け合う。
もたれず、くり返しが少しずつアンサンブルの陰影を変えて展開してゆく部分は、こういうやり方が上質のフランス音楽以外にもあることを示す。(これ、ホントに素晴らしい。)暗く湿ったパトスではなく、音楽の中心に暖かさと乾いた風が抜ける。こういった音楽を書けたのは健康に恵まれていたときのロベルト・シューマンか絶好調のメンデルスゾーンくらいではなかったか。(誉めすぎでもないよ。まんざら。)
第2楽章のスケルツォにはブラームスで親しんだ曲調が重なる。
ブラームスの緊密さには欠けるけれど、そのかわりもっと自由で風通しが良くて、熱気がこもったロマン主義の厚い服ではなく、黒と白の凛としたベートーヴェン的清新がある。舞曲的要素は中間部のゆったりした歌の中に十分甘美な舞踏のリズムを感じさせる。
重く響くピアノとチェロの低音とそれに遅れてからまってゆく小さなヘビのようにヴァイオリンが繊細な声部を形作ってゆく。
第3楽章もスケルツォ。但しこれは舞踏的要素を行ったものだろう。フォーレを思わせるような回想的な旋律と各声部がわずかずつずれてゆく中に生まれる印象的な詩情が美しい。
カンタービレの国が生んだ最良の緩徐楽章。
ピアノの美しいモノローグに低音から高音に絡む弦楽パートが強く歌う間もピアノはまるでアリアのように響く。
オーケストラのように束ねられた旋律線に各楽器が埋もれる瞬間がない最小限のアンサンブルが本当に美しい。
ボクはこの楽章を紹介するけれど、YouTubeには全楽章がある。
これは是非聴いておくべきだと思いますぞ。
今聴けなくてもダウンロードは出来るのでは。



さて、フィナーレは第1楽章をしっかり受ける形で書かれているかと思ったのですが、意外と独自の展開を持っています。
それでも随所にテーマの破片が鏤められており、回想しつつ推進し、確固とした足取りで音楽は幕を閉じます。イタリア音楽界の器楽復活を彼一人が成し遂げたとは言いませんが、そこに大きな足跡を残していることは確かです。

Piano Quintet

Piano Quintet,piano TrioNo.1

  • アーティスト: Giuseppe Martucci,Mario Borciani,Giovane Quartetto Italiano
  • 出版社/メーカー: Claves
  • メディア: CD

Martucci;Cpte.Piano Trios

Martucci;Cpte.Piano Trios

  • アーティスト: Giuseppe Martucci
  • 出版社/メーカー: Dynamic
  • メディア: CD



9743423.gif
【トレミー】人気ブログランキングにほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

nice!(46)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 46

コメント 6

matcha

スケルツォが2楽章と3楽章にあるんですね。
3つの楽器がこんなに絡むなんて、絡み方が素晴らしいし
各楽器にちゃんと主張させるところは、させている。
気持ちのいい曲ですね。
by matcha (2010-08-22 21:57) 

Silvermac

岡豊高校、まんが甲子園入賞でしたね。
by Silvermac (2010-08-22 22:06) 

Mineosaurus

matcha さん:コメントありがとうございます。マルトゥッチの個々の作品は聴き応えがあります。でも、全部聴いてもブラームスのような決定的な個性が見えてきません。そこが弱さと言えばそうなんでしょうね。好きですけどね。
Silvermac さん:コメントありがとうございました。マンガはいいのですが、支える社会的な知識に風刺を効かせるまでの深みがないんですね。新聞的です。高校生なりのひねりが欲しかったです。
by Mineosaurus (2010-08-23 07:02) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。