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広潤 [音楽]

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ガブリエル・フォーレ/ピアノ五重奏曲第1番ニ短調op.89

第1楽章 モルト・モデラート
第2楽章 アダージオ
第3楽章 アレグレット・モデラート

この曲を取り上げるのは二度目だけれど、最初に学生時代のこの曲との出会いから書いたのがブログを始めてすぐのことだったように記憶している。
記事が今のように音楽とイラストと気まぐれな日常記事になってきたのはここ数年だろうか。
気がつけば1400以上の記事を書いている。
子供の成長に従って自分の趣味や感性にも様々な変化があり、日常、仕事と家族生活が交錯することがないよう渾身の気配りをしてきて少し疲れてきた。
この夏はボクももう一つ取らなくてもいい年を取る。
不思議なものだが去年の自分ともう一つ年をとる自分にはさほどの変化がない。
それなのに10年前を思い出せば見るかげもない。
思考は成長するけれど、それを再現する身体の力は確実にその思考を裏切り始める。
その狭間の闇。
手と心をどう畳んで広げるか、その置き所すら俄に決められなくなる。
自分すら見えなくなるような風景との同化。
フォーレのモルト・モデラートの瑞々しい光の雫が、そのピアノのアルペジオを縫うようにして広がり潤ってゆく。
ヴァイオリンの香気が癒しながらその狭間の闇の中で揮発してゆく。
決して形式が生まないアンサンブル。
両手で形作られた丸さがヘラもナイフの跡も感じさせない。
5つの楽器の受け渡しがそれぞれの歌の息づかいに合わせて虹のように広がり、重なり彩色される。
息苦しさを感じさせることなく、感性が音化されてゆく色彩感。
セザンヌの裸婦に当たる光の絢爛はここにはなく、印象派と揶揄され、今ではすっかり音楽派の名称として認知された近代フランス音楽とフォーレは同じところに立ちながら、少し違う絵の具を使う。
弦楽器はモノフォニックな一条のグレイの上にたくさん水を含んだ碧や赤や黄色の水彩を重ねる。
繊維に同化した色達は無数の色彩の筋になって一条のグレイに縫い込まれてゆくように染みこみながら、それぞれの色を保ち続けている。
木に光が当りその無数の葉が個々に光を反射するのではない。
一本の灌木に異なる色の枝が異なる葉色の葉を茂らせるようだ。
耳から入り広潤する旋律は心で見える絵になる。

何故か知らないがYouTubeではこの第1番の演奏が少ない。
第2番はさすがに多いけれど、探し方が悪いのかボクが見つけたのはこの学生っぽい人達の第1楽章だけだった。
聴いていて思ったけれど、音質の均一さに気を配っているその演奏には自発性は少ないけれど、伝わってくるモノはやはりフォーレのほかのなにものでもない。

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フォーレ:ピアノ五重奏曲第1番&第2番(再プレス)

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yukikaze

最近、「コウジュン」と聞くと、「降順」や「公準」「広潤」でもなく、なぜか、「皇潤」という字が頭に浮かびます。CMにやられてしまっているのかもしれません。恐るべし、ヒアルロン酸に三國連太郎、八千草薫・・・。
by yukikaze (2010-09-06 11:58) 

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