隠れた心 [音楽]
モーツァルト/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第30番ニ長調K.306
第1楽章 アレグロ・コン スピリート
第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
第3楽章 アレグレット
いわゆるマンハイム・パリソナタの第6曲目。
モーツァルトはこのシリーズで初めて3楽章形式を採っている。
第1楽章のアレグロは生気を持って溌剌と演奏することが望まれていて、アインシュタインの言葉を借りればいかにもディレッタント(アマチュアの好事家今風に言えばオタク)の好みそうなギャラントな出来映えだけれど、ヴァイオリンはピアノを凌駕するほど頑張っていて、非常に協奏曲風である。
3つの主題が無意識と思えるほど深呼吸が必要ない自然さで展開する。
この元気一杯はリンツやパリ交響曲を聴いているようだ。
ヴァイオリン伴奏付きのピアノソナタではなく、ヴァイオリンは非常に存在感を持っている。
アマチュアでも才能があれば音楽的に自在さを発揮できそうでいて、ピアノがピシャリと枠づける音楽の広さの中で軽々とその枠を飛び越えられるか、といえばそんな才能ならばアマではなくてプロの領域だろう。
モーツァルトは献呈する相手の才能をよく知っているはずなのに、まるで自分の心のバランスを取っているかのようにスケールの大きな音楽に仕上げている。
献呈したけれど、弾きこなすことを期待したとは思えない。
否、弾きこなせても音楽の自発性を発揮できるほどにこなれたものにできるか、それを期待しているとは思えない。
この作品がモーツァルトの宝の山の中でひときわ光り輝くほどのものではないにしろ、優雅なアンダンテカンタービレからダイナミックなロンド形式のフィナーレへの展開、そのダイナミックな音楽の流れには歌うための苦労の跡がない。
この第3楽章になって初めてピアノは素晴らしく自発性に溢れる。
短いながらカデンツァを持ち、献呈しながらも全てを手放していないモーツァルトの譲れない矜持を聴き取ることができる。
Mozart: Sonatas Piano/Violin (K.304-306)
- アーティスト: Wolfgang Amadeus Mozart,Sviatoslav Richter,Oleg Kagan
- 出版社/メーカー: Live Classics
- 発売日: 2000/09/25
- メディア: CD
Violin Sonatas 5 K31 305 306 & 403 (Hybr)
- アーティスト: Wolfgang Amadeus Mozart
- 出版社/メーカー: Channel Classics Nl
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- 出版社/メーカー: Calliope
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- アーティスト:
- 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1998/08/23
- メディア: CD
はじめまして。
ボクはツィンマーマンの選集しか持ってないですが、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタはどれも好きです。
いちばん好きなのはホ短調のK.304ですが...
by 松本ポン太 (2011-02-16 22:18)
松本ポン太様 ヴァイオリンを弾かれるのですね。モーツァルトのソナタはいいですね。この曲はあまり弾かれることのない曲ですけれどボクは好きです。
by Mineosaurus (2011-02-17 23:04)