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眠りにつくとき [音楽]


75.gifR・シュトラウス/四つの最後の歌より75.gif

『眠りにつくとき』


以前、この曲の最後の曲、アイヒェンドルフの詩に基づいた『夕映えの中で』を記事にしたとき、ボクが好きなのは3番目の曲だということを書いたと思うが、ジジイの記憶は定かではない。
『最後の歌』というロマンティックな題名は、この後1948年11月に書かれた歌曲『葵』が献呈されたソプラノ歌手の遺品から見つかってさしたる意味はなくなってしまった。
また、シュトラウスはこの作品集を4つで止めるつもりがあったのかどうかも今ではわからない。
ただ、第3曲までのヘッセの詩とアイヒェンドルフの詩の間には『死』の受容について相当な開きがある。
詩を作った人間が違うのだから当たり前だけれど、曲を付けたR・シュトラウスはその豊かな色彩を持つ管弦楽法の選択肢からきわめて色合いを絞ったオーケストレーションを行っている。
一般にこれらの作品はいずれも『死』をテーマにした『詩』を扱っていると言われるけれど、『死を思う』主役はそれぞれ立場を異にする。
アイヒェンドルフの詩はダイレクトであり、R・シュトラウスは交響詩的共感を持ってこの作品を取り上げている。
詩はセピア色で諦念に染められ、受け容れる心の安らかな剥離が無理なく描かれる。
アイヒェンドルフの歩幅とR・シュトラウスの歩幅はきわめて近くて、呼吸は重なっている。
ヘッセの詩による第3曲はR・シュトラウスの音楽表現がもっとも効果的に発揮されている。
深い眠りの中から解き放たれてゆく魂が夜の魔法の中に飛翔する。
その軌跡が独奏ヴァイオリンによって非常に美しくまた具象化され、次に詩を音化するソプラノの濁りのない魂に道を示してゆく。
闇の中に車輪を畳み、機首を立てた旅客機のように魂はさらにヴァイオリンを超えて肉声の滑らかで翳りのない熱い漆黒を目指す。
ゆっくりと瞼が閉じられ、唇から安息の寝息がひとつ洩れるほどの間隔で、闇から降りてくる柔らかな光の帯がホルンに乗ってゆっくりと落下し、詩的な音空間に広がりを生む。
そして音楽も死につながる闇自体も終わらせるように弦楽が響いてゆく部分は何度聴いてもR・シュトラウスの凄さが身にしみます。

かなり前にグールドがピアノでソプラノ歌手の伴奏をやっている映像を見たけれど、本当にやりたかったのかなぁ…
この作品には独奏ヴァイオリンが欠かせない。
R・シュトラウスの全作品の中でもこのヴァイオリンのパートは記憶に残るものだから。

 

ドイツ語の下に英語訳が出るよ。
ボクはあまり歌曲は聴かないけれど、ドイツ人の詩に対する言葉の扱い方はやはり耳から入ったものでは超えられない部分がある。
ルチア・ポップの歌も好きだけれど、このエリーザベト・シュヴァルツコプフというご婦人の歌はドイツ語の詩を音化するのには非常に優れた楽器であると、ボクは未だに思っています。

 



 

R.シュトラウス:4つの最後の歌

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  • アーティスト: R.シュトラウス,ティーレマン(クリスティアン),ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2008/11/26
  • メディア: CD

Also Sprach Zarathustra / Don Juan / 4 Last Songs

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 1999/08/10
  • メディア: CD

4 Last Songs

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 1994/09/06
  • メディア: CD

R.シュトラウス:4つの最後の歌

R.シュトラウス:4つの最後の歌

  • アーティスト: R.シュトラウス,マズア(クルト),ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2004/04/28
  • メディア: CD

R.シュトラウス歌曲集/四つの最後の歌

R.シュトラウス歌曲集/四つの最後の歌

  • アーティスト: シュワルツコップ(エリザベート),R.シュトラウス,セル(ジョージ)
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1996/02/21
  • メディア: CD

R.シュトラウス:四つの最後の歌

R.シュトラウス:四つの最後の歌

  • アーティスト: セル(ジョージ),ヘンケル,ファルケ,デーメル,マッケイ,クロプシュトック,ヘッセ,アイヒェンドルフ,ロンドン交響楽団,ベルリン放送交響楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2002/03/06
  • メディア: CD(上のCDとソースが同じです。)

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コメント 3

glennmie

グールドの映像、私も見ました。
イケてないソプラノ歌手の伴奏で、なんだかつまらないと思っていました。(笑)
シュワルツコップさんは、グールドが大好きな歌手だったそうです。(彼女とのレコーディングで、彼女に嫌われてしまったようですが。)
この動画を見て、彼女の素晴らしさと曲の凄さを実感できました。
ありがとうございました。
by glennmie (2011-02-16 08:32) 

Mineosaurus

glennmieさん。イケてないソプラノ歌手はかわいそうですねえ。でも、芯を突いてます。(笑)
名の知れた人なんでしょうけど、結果はベートーヴェンのチェロソナタの時のプリムローズと同じです。完全に主役を食ってますね。
by Mineosaurus (2011-02-16 22:46) 

Silvermac

深夜便が90分後に切れます。
by Silvermac (2011-02-16 22:46) 

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