忘れがたい演奏 [音楽]
フランク・ブリッジ/チェロ・ソナタ(1913-1917)
第1楽章 アレグロ ベン モデラート
第2楽章 アダージオ マ ノントロッポ
-モルト アレグロ エ アジタート
ベンジャミン・ブリテンが自らピアノを受け持ち、師がこの作品を献呈したムスティスラフ・ロストロポーヴィチと協演した演奏。DECCAの中古アルバムで買ったのは学生時代だったか。
メインのシューベルトのアルペジオーネソナタを聞きたくて買い求めたものであり、このソナタは当時のボクにとって添え物くらいにしか聴く耳を持っていなかった。
ホントに、まったく馬鹿だね。
フランク・ブリッジ自体舘野泉氏がコンサートステージに復帰した際、彼の左手のための3つの即興曲を弾いてセンセーショナルなカムバックを果たした演奏で知ったくらいのものだった。
今はこの変幻自在の阿修羅のような多面性をきわめてハイレベルでもつ音楽家の大ファンである。
何年か経って聴き直したブリテンとロストロさんの演奏はそれは素晴らしいものでした。
2楽章形式だけれど、聴き方によっては3楽章にもとれる。
ピアノパートは美しく、中域の肉乗りの厚いチェロの抒情には決してもたれるところはなく、粘らず、嫋々と鳴りながらヒューマンである。間隙を埋めるピアノの点描はそれ自体重奏の役割を十分に果たすだけの緻密さと質量を持っている。
語らい合いながら競うように対峙する。
一本の細いけれど靱い糸で引かれ合うような緊張感の中に高い音を発てて断ち切れる一歩手前のテンションが音楽の流れにぴたりと嵌り込む。
それができなければこの曲は弾きようがなく、奏しようがない。
回想される冒頭呈示された主要旋律が明確なピアノのアクセントをともなってフォーレのような香気を振りまきながら飛散する。
腹に応えるようなチェロの熱い覚悟がピアノにのしかかるように終わる。
そんな第1楽章の後、今度はピアノがリードしつつ、アダージオ・マ・ノントロッポ、ほぼレントの響きが交錯し、縦のピアノに横糸のチェロが見事に溶け込んでゆく。
素晴らしいカンタービレ。
印象的な和音が夢想を断ち切るように割って入り、非常にピアニスティックなエンディングへ向かいつつ、冒頭の主題は形を変え、チェロの中に蘇る。
高音は美しく、低音は厚く歌をうたう。 渋い。
最近聴いた演奏では、この演奏が素敵でしたね。
第2楽章を
- アーティスト: Lowri Blake,Edward Elgar,Frank Bridge,Iwan Llewelyn-Jones
- 出版社/メーカー: Lowri Records
- 発売日: 2001/02/05
- メディア: CD
- アーティスト: Paul Watkins,Alexander Goehr,Benjamin Britten,Frank Bridge,Huw Watkins,Huw Watkins
- 出版社/メーカー: Nimbus Records
- 発売日: 2004/08/03
- メディア: CD
- アーティスト: Bernard Gregor-Smith,Claude Debussy,Ernö Dohnányi,Frank Bridge,Yolande Wrigley
- 出版社/メーカー: ASV
- メディア: CD
- アーティスト: Bettina Barbara Bertsch,Benjamin Britten,Elliott Carter,Frank Bridge,Samuel Barber,Mathias Weber
- 出版社/メーカー: Musicaphon
- 発売日: 2002/06/03
- メディア: CD
- アーティスト: ロストロポーヴィチ(ムスティスラフ),ブリテン,ブリッジ,ブリテン(ベンジャミン)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/07/25
- メディア: CD
- アーティスト: Rebecca Rust,Donald Francis Tovey,Frank Bridge,David Apter
- 出版社/メーカー: Marco Polo
- 発売日: 1995/06/21
- メディア: CD
コメント 0