静謐の嘆き [音楽]
プフィッツナー/弦楽四重奏曲第4番ハ短調op.50(1942年)
第1楽章 序曲(Einleitung).アンダンテ アタッカ
第2楽章 アンダンティーノ
第3楽章 ゆっくり 直ぐに始めて
第4楽章 アレグロ
まるで悲しみや辛さから逃れるために疲れ果てて眠りについた旅人が目覚めたとき、
その悲しみを未だに引きずっている自分に戻るように
躊躇いがちに意識よりも遙かに遅れて光の中で両目を開くように
音楽はノスタルジックに滑り出し、ゆっくりと薄羽根に体液が通うように広がって行く。
ベートーヴェンやシューベルトの行き方とここにはまた違うものを目指した調性音楽がある。
室内楽の重奏の中で弦楽のみの四重奏だけが何故にあれほど小難しい曲趣を増やしていったのだろうか。
それは弦楽四重奏という編成が生まれた頃には考えられなかったことだろう。
ここに聴かれる音楽は、ベートーヴェンの後期やバルトークの6曲を通過して敢えて弦楽四重奏で演奏されることに意味を問うたものではない。
自分の内なる調性のとった形を磨き整理し、推敲し4つの楽器で均等に描いたものだ。
これは古典で一度達成された音楽する歓びをもっと私的な自己表現の中でひりひりするような心と薄皮一枚で共鳴しながら美しく歌い続けている。
音楽を書きだしたその刹那のイマジネーションではなく、激情や激昂や悲嘆が何度も燻され、丸められ、磨き抜かれている。
感じるものの色を先入観なしに映し出す鏡。
音楽はどの楽章でも大乗にも小乗にも傾かず、中庸の鏡のような水面を滑って行く。
同じフレーズが印象的に強弱を変えることはあっても、それは感情的には透明である。
第4楽章にようやくアレグロの鼓動が音楽を終結させるけれど、これほど静かなロマンティシズムはこの編成の音楽では長いこと聴いていない。
4つの楽器の対位が明確に全て捉えられながら溶け合う半歩先の音楽を聴き取ることができる。
プフィッツナーの音楽は音楽の爛熟や退廃とはまた少し違った流れの中でこうゆう澱みも生みながら緩やかに深く流れる。
さすがにYouTubeでも見つけられなかった。
第1楽章を聴けるところまで
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