涼やかな遠景 [音楽]
ヒンヤリとする冷気が朝靄の中に残り、東の空が縹色に開けてくる。
9月1日の朝はさすがに涼しいと思いたかった。
朝陽の光にはもう夏の暑熱はこもらず、広がって行く白色の光の後から空色のカーテンが引かれる。
空はもう高く季節の移ろいが終わったことを知らせる。
そういうイメージをうだるような熱帯夜が開けたばかりの暑さの中でどれだけ抱けるか。
蝉の鳴き声はいまだに鋭く、夜開けた瞬間から始まる。
大雨の天気予報が出る中で、疑問の余地のない快晴。
なかばやけくそで起きあがり、誰に聴かせるわけでもないけど、『あっついィ………』と呻く。
クーラーのリモコンに手が行きそうになるのを何とかこらえ、窓を開け、風を入れようとするのに空気が熱帯夜で睡眠不足なのかまだぴくりとも動かない。
新聞配達のおじさんと牛乳を運ぶ兄ちゃんが窓の下で明け方に交わすフツーの音量での会話。
何度も注意するのに、3日持たない。
恐竜並みの脳みそである。
『もう、この新聞と牛乳はとらない』
もんの柵に張り紙をした。
いかんいかん。大人げないと思いつつ、外に出た張り紙を剥がす。
扇風機のスイッチを入れ、出来るだけ机から離れて椅子にもたれ、『朝の歌』を聴いた。
冒頭に書いた朝のイメージが苦もなく頭に浮かぶ。
こう作ろうという色気がないイメージに寄り添った歌。
ヴァイオリンとピアノのヴァージョンもあるみたいだけど、これは弦楽がいい。
涼しくはならないけれど、ほんの少し目線が遠くなって、机に放り投げていた剥がした張り紙を丸めてくずかごに入れた。
エルガー/管弦楽のための2つの小品op.15から第2番『朝の歌』
- アーティスト: BBC交響楽団,ブリテン,ヴォーン=ウィリアムズ,ディーリアス,エルガー,デイビス(アンドリュー)
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2000/06/21
- メディア: CD
- アーティスト: ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団,エルガー,バルビローリ(ジョン),バルビローリ(ジョン),ボールト(エイドリアン),レッジャー(フィリップ),エルガー(エドワード),マリナー(ネヴィル),デイヴィス(アンドリュー),デュ・プレ(ジャクリーヌ),フィルハーモニア管弦楽団,ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2000/08/30
- メディア: CD
- アーティスト: バルビローリ(ジョン),ニュー・フィルハーモニア管弦楽団,プレ(ジャクリーヌ・デュ),ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団,フィルハーモニア管弦楽団,ノーザン・シンフォニア管弦楽団,オスロ・フィルハーモニー管弦楽団,ベルリン弦楽ゾリステン,ロンドン交響楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2007/04/25
- メディア: CD
Mineosaurus さんの気持ちは、新聞配達のおじさんと牛乳を運ぶ兄ちゃんに、必ず通じますよ!
by 般若坊 (2011-09-01 18:41)