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完成度 [音楽]

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サン=サーンス/ピアノ五重奏曲イ短調op.14

第1楽章 アレグロ モデラート エ マエストーソ
第2楽章 アンダンテ ソステヌート
第3楽章 プレスト
第4楽章 アレグロ アッサイ,マ トランクィロ

1858年の作品だからサン=サーンスが23才くらいの作品。
若書きの作品ではない。
既に凡百の天才の頭に抜きん出ている。
調性音楽の終焉を間近に控えた時節にはこういう強者がゴロゴロいたんだねえ。
彼の室内楽はボクが基準にしている弦楽系のソナタに好みに合うものがない。
でも、重奏曲は素晴らしい。
特にこの作品14は力強く美しい。
第1楽章マエストーソなピアノの思い序奏から始まり、弦楽は微妙な遠近を保ちながらピアノを支える。
彼はピアノの名手だったが、彼の協奏曲は今ひとつピアノパートがめまぐるしすぎて水っぽい印象があった。
全体の旋律は美しく、この五重奏曲にも同じことが言える。
それは重奏を重ねポリフォニックな形式を堅持しながらも、弦楽は彼独特のピアノを引き立たせる手段になっているものだからだ。
そこにはモーツァルト以来ほぼ役割が均一化してきたこの分野の楽器構成に先祖返りのショックを与えたような印象を受ける。
ピアノの美しさの他に弦楽の美しさが個の力強さを持たない。
ある意味これは弦楽四重奏伴奏付きのピアノソナタである。
そしてその美点が最高に発揮されるのは第2楽章のアンダンテでうたわれる歌。
このレチタチーヴォ風のテーマはどこかで聴いたことがあると奇妙な感じを持っていたが、レイノルド・アーンのピアノ協奏曲で似通った旋律を一度聴いている。
アーンはサン=サーンスにも師事していて、彼がピアノ協奏曲を作曲するまでにこの曲は何度も耳にしたはずだ。アーンのテーマも美しいと思ったが、これは別格である。
夜明け前の思い扉を開けてから開けてくる空の色が完全に藍色を払拭するまで、長い微笑みを浮かべたままずっと待っていられるほどの希望を音化している。
弦楽は切れ切れのピアノの残像に細い螺旋を描きながら絡みついて行く命のウロヴォロス、安らいだまま永遠に続く音楽はないけれど、それを淡く期待させるようなロマンティシズムから少し離れた静けさの中に伏流するように続く。
彼が書いた緩徐楽章で出色の優しき歌。
第3楽章のプレストはスケルツォの位置にあるのだろうけれど、第2楽章を受けきるにはこれしかなかったのだろうけど、ちょっとスケルツォとは言えないね。舞踏の規則性がない。でも意気は感じる。いい音楽です。
第4楽章 堂々としたフィナーレ。
珍しくチェロの歌が静かに流れ、後をヴィオラが同じ歌をうたいながらチェロが残る旋律にヴァイオリンが加わって行く。
フーガのように旋律が舞ながらやがてクッキリしたテーマが弦楽にあらわれるところで主役のピアノが入ってくる。
ここでは舞踏の素早い足の運びがありつつ、均等な弦楽とのアンサンブルが数瞬明滅する。
暖かいシベリウス。
ピチカートとうねって行く高音の弦楽の旋律が奇妙な想像をさせる。
この作品はとても良くバランスがとれていて、紹介した第2楽章だけでなく、全曲が紹介されているので是非。

 

 

 

 

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