Lentoの糸 [音楽]
意識の中にゆったりとした風紋を描くように
ヴァイオリンはそれ以上優しくなれないほどに、儚い歌をうたう。
無垢の眠りを妨げるものはそこには何もなく、眠りそのものに人生が削られ、生きていることの意味が目を見開いている時間に狭められ、漉されてゆく。
瞼を閉じている間に時間は過ぎ
老いはそこを飛び越えて細い夢の糸を切る。
オーケストラはヴァイオリンが辿った道を同じ重さで辿って行き
息を殺してゆりかごの側を通り過ぎる。
それでも人は目覚める。
美しくても、優しくても、儚くても音は知覚され
瞼の裏に熱い光を感じるようにその人の心を奮わせ
沈んでいた意識の澱を舞い上げる。
乳呑み児の色をした澱は死の静謐に堆積するまで塵のように浮遊し続ける。
眠っている間に老いて行くことを無意味と感じるほどに純粋な最初の眠り。
円かで滑らかな寝息が、世界の命の匂いを嗅ぐ最初の目覚め。
その新鮮がいつの間にか苦い痛みに代わるのはそんなに遠いことではない。
奏でられるレントの流れは一度も荒ぶることもなく安らかな息づかいの中で、ゆっくりと繭を紡いでゆく。
目覚めたばかりのその子のためにもう一度。
イザイ/子守歌op.20 ヴァイオリンとオーケストラ
今年も宜しくですv(^皿^♪)
by emuzu (2011-01-11 13:03)