チェロ界の帝王のかわいい音楽 [音楽]
カルル・ダヴィドフ/無言歌 ロマンス
カルル・ダヴィドフと言えば19世紀のチェロの巨匠として著名だった人だが、当然当時の器楽演奏家は自ら作曲もした人は多く、自分も他の音楽家の献呈作品を受ける立場にありながら、他の作曲家に作品を捧げたりもしている。
今よく聴かれる作品は小品的なものが多く、ここで紹介する無言歌もそのようなものである。
自分の教え子達にはヴァイオリンから派生した楽器の特徴からヴァイオリンの感情表現を学ぶことを薦め、チェロの演奏技術に人体の関節の動きや生理学的な動態の力学的側面の研究を反映させ、非常多様で繊細な技巧を確立している。
このチェリストの全盛期に生きた作曲家演奏家はチャイコフスキーを筆頭に多かれ少なかれ彼の影響をとどめている。
1870年には後援者から1挺のストラディヴァリウス(初代)の楽器を贈られている。
以後29年間彼はこの希代の名器を駆使して演奏活動を行った。
彼の死後彼の愛奏したチェロは『ダヴィドフ』と命名されている。
以後、この楽器を愛蔵していた富豪がジャクリーヌ・デュ=プレに贈り、もともとストラディヴァリウスを使用していた彼女をして木の歴史と言わしめた名器は彼女の死後、ヨーヨーマの手に渡っている。
彼は4曲のチェロ協奏曲を残しているが、現在演奏される形式はオーケストラではなく、ピアノ伴奏でのソロという形式が多い。チェロの音楽的魅力は捨てがたいけれど、指揮者とオケを整えるほどに管弦楽的な魅力がないと言うことだろうか。
小品では作品2くらいの『泉にて』というのが有名だけれど、技巧的に細かすぎてボクには煩わしい。
ここで紹介した無言歌のロマンスは何ということはないリリカルな小品であるが、聴きやすく、技巧に走る部分もほとんど見えないことからくつろいで聴けるタイプの音楽になっている。
もっとも無言歌という形式そのものがそんな風な作風なのだけどね。
チャイコフスキーに『チェロ界の帝王』と呼ばしめた片鱗は窺いようがない。
彼のチェロ協奏曲第2番はオケが付いた演奏を聴くことができるが、非常にヴァイオリン的な感情表現が豊かな旋律を持つ。
その豊かさが、この小品にも少し薫っている。
- アーティスト: ハーバート,グラズノフ,レーガー,ダヴィドフ,ドヴォルザーク,外山雄三,フォーレ,エルガー,鈴木秀美,小島芳子
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2002/09/25
- メディア: CD
- アーティスト: エルガー,ピアソラ,バルサンティ,チャイコフスキー,シベリウス,ヴィラ=ロボス,ダヴィドフ,パラディス,ジャン・ワン,セルシェル(イョラン)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/06/20
- メディア: CD
チェロの音色は好きな音です。
by Silvermac (2011-10-21 19:55)
Silvermac さん
暖かで低く豊かな音。私も大好きです。ただ、このチェロの帝王の協奏曲はまるでヴァイオリンです。
by Mineosaurus (2011-10-21 21:44)