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末頁のロマンティスト [音楽]


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セルゲイ・ボルトキエヴィチ/交響曲第1番ニ長調 ”我が祖国から”op.52

第1楽章 ウン ポコ ソステヌート-アレグロ
第2楽章 スケルツォ:ヴィヴァーチェ
第3楽章 アダージオ
第4楽章 アレグロ ヴィヴァーチェ


ボルトキエヴィチの管弦楽作品としてはボクの手持ちのものの最後かな。
とにかく露出度があまり多くなくて、ピアノ協奏曲第2番や交響曲第2番とか聴き応えのあるロシア音楽をいくつか書いているのだけれど、ラフマニノフのような胸苦しいまでの爛熟感がなくて、後一歩で後ずさりしている部分がじれったい。
成功しているかどうかあまりに録音状態が悪くてよくわからない第3ピアノ協奏曲はもう少しで手に入りそう。
ボクの抱いている印象が、録音状態の良い演奏で変化するかちょっと待ちどうしい。
ここでは、YouTubeでは第3楽章しか聴けない第1交響曲(第2交響曲もそうだっけ)をとりあげた。
この交響曲は”我が祖国から”という副題が付いているけれど、『我がチャイコフスキーから』とか付けた方が良いのではと思ってしまう。
ラフマニノフに酷似しているという人が圧倒的に多いように思う。
確かに協奏曲の第2番(左手)はそういうソノリティであり、ラフマニノフ以降のロマン派のピアノ曲としては充実したものだと思う。
それはそれ、これはこれで、彼の根っこは実はラフマニノフではなくてチャイコフスキーなのだと言ってしまうと、その印象で予断ができあがるのか第2楽章の金管の使い方や、舞踏的音楽の軽快さはチャイコフスキーのものであり、ラフマニノフの屈折からは出てこない。
言い方を変えれば、やはり『ピアニストではなく、この人は作曲家なんだなあ』と思ってしまう。
ロシア的な主題が仄暗いロマンティシズムを纏って金管のファンファーレから沸き上がってくる第1楽章の手法は、チャイコフスキーの5番にベートーヴェンを重ねたよう。
第2交響曲からさほど前に作られたものではないけれど、この第1楽章はかなりローカリティを感じさせる。
ラフマニノフの洗練からはほど遠い駆け回るアレグロである。
でも、決して聴きづらくないからね。
つながっているテーマが歌謡的で良い感触。
第3楽章。YouTubeの演奏もボクのソースと同じものらしい。
これは何処をどう突っついてもロシアンメロディである。粋のままの民謡的旋律が牧歌的な雰囲気を醸す。
そこにしっかりと立って、何もない広大肥沃な黒土が夕陽のオレンジ色に染まって行くのを眺め続けているような音楽である。
中間部のオーボエのソロはこの音楽にふさわしい柔らかさと懐かしさを添える。ここだけでも聴きものだね。
この旋律が民謡なのかボルトキエヴィチの血の中にあるロシアの歌なのかボクにはわからないけれど、彼は、ここで自分の言葉で語っている。音楽的に力の入った第1楽章を紹介せず、この第3楽章を紹介しているYouTubeの紹介者はさすがであると思いたい。
フィナーレはロシアン・シンフォニーのエクストラガンツァ(ドンチャン騒ぎ)をきわどく良識が抑制している。
演奏しているのがイギリスの国営放送局の交響楽団でよかった。

てなわけで、YouTubeから聴ける第3楽章を

 

 

 

Symphonies 1 & 2Symphonies 1 & 2

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hyperion UK
  • 発売日: 2002/10/08
  • メディア: CD

CDは今のところコレしかない。





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月夜のうずのしゅげ

3楽章のオーボエのソロ、聞かせていただきました。作曲家の名前は初めて知りました。個人的には、グレツキと言う作曲家のシンホニ―NO3の1楽章だけ気に入って毎日のように聞いています。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-04-22 11:05) 

Mineosaurus

ヘンリック・グレッキですか。交響曲第3番は彼の厳しく先鋭的な前衛性が薄まった頃の作品ですね。ボクはあのゲシュタポがユダヤ人を収容したホロコーストの壁に書かれた言葉を歌にした第2楽章が忘れられません。オシベンチウムだと思っていたのですが、別の場所らしいですね。ザコネバはポーランドなんですね。
by Mineosaurus (2012-04-22 18:01) 

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