SSブログ

8分の1のシューマン [音楽]

ViolinCello.jpg

カミッロ・シューマン/チェロソナタ第1番ト短調op.59 全曲

シューマンというラストネームを持つ音楽家はボクが知っている作曲家だけでも8人いる。
昔は自作自演がフツーだったのだから音楽家としての実数もあまり変わらないかも知れない。
その中でロベルトとクララの二人の名前は別格ではある。
以前小品を少し紹介した記憶があるが、19世紀に生まれ、20世紀半ば当たりまで生きたシューマンという名の作曲家にカミッロという音楽家がいる。
音楽一家に生まれ、12歳で地方の管楽アンサンブルの指揮者を担当し、早くから才能を発揮した。17歳でライプツイヒ芸術学院で作曲をライネッケに学び理論をヤーダスゾーン、ピアノをツヴィンツァーに学んだ。
オルガニストとして活躍し、ガブリエリからマックス・レーガーにまで高度な音楽性を発揮した。
波瀾もなく万丈もない幸福な音楽家であったと思いたい。
そのためか音楽には鬱屈したわだかまりはなく、作風は後期ロマン派に属するが、世紀末のデカダンスからは遠ざかる努力すら必要のないほどすっきりと胸を張っている。
作風はブラームスやピアニスティックな部分はラフマニノフの影響も散見されるが、仄暗い部分ですら、手探りの不安がない。
素直で素朴な歌が流れ、育ちの良さが毒を消し去る。
そこが、歴史に埋もれる原因ではあろうが、複雑で傷つきやすい退廃に倦む現代の耳には、素直に受け容れられる音楽になる。
ここで紹介するのはチェロ・ソナタ第1番ですが、穏健で上品なロマンティシズムがとても好ましい作品です。
手を抜いたような遊びの部分はないけれど、ピアノとチェロのバランスが絶妙で目の詰み方はブラームスに匹敵するけれど、メロディーメーカーの優れた資質がスケールはなくとも風通しのよい仕上がりをものにしています。
CDの発売数も少ないけれど、ドイツ音楽の層の厚さを感じます。

YouTubeは全曲。


第1楽章 アレグレット モデラート
第2楽章 アンダンテ カンタービレ エド エスプレッシーヴォ
第3楽章 フィナーレ:アレグロ モルト

第1楽章は起伏のあるロマンティシズムがファンタジックなピアノパートに支えられていてとても聴きやすく、またロマン派の教科書のような情緒的な音楽は美しい。主題の再現部でピアノのニュアンスのあるアルペジオの隙間からチェロの燻された音色が紫煙のように立ち上がる部分は素敵です。
第2楽章文字通りよく歌う抒情的なアンダンテですが、ピアノパートが美しいので全体が引き締まっていて感傷的になることはない。客観的で、しっかり音楽を俯瞰している設計が印象に品格を与えている。
中間部のノスタルジックなチェロの歌が抑制されていながらとても美しい。
風景もそれを見ているものも動かない中を時間がゆっくりとセピア色の緞帳を下ろしてくるような緩徐楽章です。
第3楽章アレグロ・モルトですが、やや創造力が息切れしています。
異種の楽器のデュオとしては非常にバランスがとれた作品で、きちんと面取りされたジャガイモみたいに煮くずれしてなくて、それが逆に食い足りない。
シューマンやブラームスにあるような包み込まれたパトスが殻を破って噴出するような意外性がちと少ないか。
それでも、ニコライ・ミャスコフスキーのチェロソナタほどはノスタルジックではないけれど、同じように何度も聴ける音の楽しみです。

最近YoTubeで全曲を纏めて聴けるものが多くあって、有り難い反面、ここだけ聴きたいという部分が取り出せない憾みもあります。次に開くと削除されているということも目立ってきました。
今だけかも知れません。




icon icon
チェロ・ソナタ第1番、第2番、小協奏曲 クリーゲル、ピエモンテージ





9743423.gif
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ【トレミー】人気ブログランキング

nice!(49)  コメント(5)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 49

コメント 5

空楽

ご無沙汰しております。
これからも宜しくお願いします。
by 空楽 (2012-04-24 15:52) 

般若坊

8分の1 のシューマン面白く読ませていただきました。シューマンという姓には音楽家が多いのですかね。
Camillo Schumannのチェロソナタ聞かせていただきましたが、なにかお行儀のいい曲の感じです。ピアノが奏でチェロも鳴っているのだけれど・・・なかなか共感がわきません。
by 般若坊 (2012-04-24 17:20) 

Mineosaurus

空楽さん:お気に入り入れ直しました。
般若坊:コメントありがとうございます。そうですね。カミッロの曲は全て整っています。演奏家にかかる比重は重いですね。ところでシューマンだけでなく、まあ、ドイツ人にはいまでも「ありゃ」っていう名前のかたがいますよね。ちょっと前の体操の選手にはブルックナーという人がいました。
by Mineosaurus (2012-04-25 06:43) 

空楽

ご訪問ありがとうございました。
嬉しいコメント励みになります。
by 空楽 (2012-04-25 13:01) 

月夜のうずのしゅげ

曲を聴く間だけほっとします。内側から力が満ちてくるような感じです。もっとゆっくりしなければと思わされました。
by 月夜のうずのしゅげ (2012-04-28 08:13) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。