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耳の告白 [音楽]

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ホアキン・ロドリーゴ/ピアノ協奏曲 1996

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第1楽章 アレグロ コン ブリオ
第2楽章 アレグロ モルト リトゥミコ(リズミカルに)
第3楽章 ラルゴ
第4楽章 アレグロ マエストーソ

この曲を記事にするのは確か2度目。
4年くらい前だからちょっと恥ずかしい。
今の方が好き勝手書いてるなぁ。文章は理屈っぽくなったけど、言葉は感じたものを表現するのにもっと苦しまなくなってる。

今の耳でもう一度。

三歳で光を失った少年が渇望した音楽。
20世紀の協奏曲で最も有名なギターのための協奏曲アランフェスのアダージオ。
余りにも有名なその音楽の影に幾つもの名品が眠っている。
世界の彩りを全て経験の中に取り込む遙か以前に、彼は耳に入る音楽によってその音楽的世界を育てて行く。
自らの旋律を記譜することなく、アンダルシアの風や音や匂いを感性の絶対にまで高めて行く。
アランフェス協奏曲を書いてから4年。
1943年もう現代という時の流れの中で彼は自分の耳で選び取った現代の管弦楽の音に抒情的で明晰なピアニズムを刻む『英雄的』協奏曲を書き、さらにそれを死の三年前に4楽章のピアノ協奏曲として改作した。
彼はギターが弾けたわけではない。
もともとはピアニストであり、その技術の高さはこの曲の第4楽章の火を吹くようなフィナーレに色濃く表れている。
20世紀の音楽家として彼の耳に入る音楽は彼が求めない限り、現代の実験的音楽の無味乾燥からは遠く、その遠景を飾る金管にわずかな色づけとして聴ける。
その第3楽章のラルゴはアランフェスのそれに勝とも劣らない音楽性を示す。
3歳から視覚障害者となった彼のピアニストとしての深さは技術的な第4楽章にあるのではない。
むしろこのラルゴの静謐を埋めて行く音にあるのではないか。
その間と擦過して行く弦楽の薄く細い流れの中で歌われ、滑らかなトランペットに明滅しつつ寄り添う音取りの美しさに表れているのではないか。
目を見開いても目を閉じても普遍の自我と自尊とそれを超えるものの存在を確信している。
第2楽章の終わり、昂る魂に打ち付けられる8つの和音。
それはさらにピアニッシモで音楽の終始に繰り返される。
ドラマティックでありながら同じ国のレスピーギに感じるような映像が浮かぶことはなく、音楽は独自の無明の中で光を見たような抽象性を覚を覚える。

画像はパブロ・ピカソ『科学と慈善』

 

 

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般若坊

Good ! ピカソの絵と相まって すばらしい悲壮感が あふれています。 看護婦に抱かれた幼な子は 母のまさに逝かんとしているのを 理解していないでしょうね・・・
by 般若坊 (2012-05-17 21:13) 

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