長所の発揮 [音楽]
サン=サーンス/ピアノ三重奏曲第1番ヘ長調 op.18
第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 スケルツォ:プレスト
第4楽章 アレグロ
サン=サーンスが力を入れた室内楽の中で2曲知られているピアノ・トリオ。
どちらかというと晩年のホ短調の方が良く演奏される。
ボクも記事にしたのは第2番がかなり速かった。
若い頃のものはどうしてもピアノの技術に見合うアンサンブルを構成するようなところがあり、この曲でもそれは見られるけれど、明朗な調性がそれを救っていて急-緩の楽章の対比が深くて優しい。
この辺を期待してボクは以前チェロ・ソナタを手に入れたのだけど、これがまったくピアノ主導のスポーツカーみたいなテクニカルなソナタで、第1楽章を聴いた後どうしても先に行く気がしなくなってそのまま放置している。
もう数年経ったので、そろそろ周辺から馴らしてゆこうかとピアノ・トリオに近づいた。
この作品は34,5歳のもので20年くらい後に作曲された第2番よりもかなり一筆書きのような瑞々しさがある。
第1楽章のこだわりのない旋律は結構好きで第2楽章の美しくロマンティックな歌とのバランスがよろしい。
ピアノはここでも雄弁で、熱を帯びてくると先に旋律のアウトラインを突っ走り、曲のイメージを縛ってゆく。
その後のメランコリックな弦楽の追奏がラテン系の火を含んでいて、支えるチェロの幅の厚いモノトーンの音色が音楽を落ち着かせる。
再現部で再びアンダンテの動機が帰ってくる。
第3楽章はユーモラスなスケルツォ。
この辺がサン=サーンスの楽しいところ。
とてもスケルツォらしいスケルツォ。今聴くと結構楽しいではないか。
最終楽章のアレグロは随所にベートーヴェン弦楽四重奏曲のような楽想が顔を覗かせる。
ピアノが抑制されていて弦楽が前面に出ている場面、非常にメリハリがきいたところでピアノが入るので音楽の輪郭がクッキリとしていて整っている。
中間部ピアノに出てくるモノローグは美しい。
創造性の厚みは第2番には及ばないけど、面白い曲ですね。
紹介する楽章は、そうですねえ、アンダンテだろうね。やっぱり。
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