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棘のない薔薇 [音楽]

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ブルッフ/クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲ホ短調 op.88

第1楽章 アンダンテ コン モート
第2楽章 アレグロ モデラート
第3楽章 アレグロ モルト

 MaxBruch.jpg  この当時の協奏曲に入り口の短くてあまり意味のなさそうなオケの総奏は残念なことにこの作品にもある。
それをやらなくたってこの人はそれほど独奏楽器によりかかった作曲をする人ではないのに残念だなあ。
その短い序奏の後のロマンティックな歌は明確な主題となって楽章全体を優美に流れる。
この人の不幸は(今はそんなことを言ってるんだけれど、当時は大作曲家として知られている。)ブラームスの生きた時代とほぼ重なっているということ。
また、この人は徹底的にナチスドイツによってスポイルされ続けた。
原因は以前にも何処かで触れたけれど、コル・ニドライなんかのユダヤを扱った曲が多くて彼自身がユダヤ系であると誤解されたのだろうといわれている。
ブラームスの簡明さと峻厳さはないけれど、同じ色合いだけど独自のロマンティシズムを持っている。
歌曲はボクの苦手な分野だけど、美しいメロディが多くて、それは器楽や室内楽にも通じている。
歌謡性という点では同時代のブラームスを凌駕する。
でもそれは逆に言えば構成美にもって行かなくても作品が仕上がってしまうわけで、音楽の持つ腰の据わり方は二歩も三歩も及ばない。
お手軽なのである。
第1楽章のヴィオラの旋律は美しい。同系色の木管楽器を持ってきたのは何故かなとも思うけれど、両独奏楽器を対立する位置に置かず、同じ切り口を音色の違いで歌い継がせるところがなかなかである。
もっともこれは多分にボク自身の両楽器の嗜好が関わってくる感想だけどね。
第2楽章はクラリネットがリードし、ユニゾンでヴィオラが追いかけ、両者が直ぐに融合しつつ得意な音域で艶やかな歌を奏でる。
何も考えず、ぼけーっと聴いてしまうところです。
でも、このクラリネット主導の楽章はいいです。
美しいけれど、強烈な印象はない。物足りない。
あるだろうねえ。そういう感想は。
先生自身も多少そう感じたのかも知れなくて、第3楽章は意外と頑張る。
トランペットがファインファーレを呈示し、オケの総奏が続くと独奏楽器が雄弁に歌い始める。
でもピアノではないので今ひとつ切れのよい見栄が切れない。
この楽章はオケを聴くべき楽章である。
ボクの聴いているオーケストラが上等でないのかどうも自発性に欠ける。
音楽が同じ軌道で飛んでこない。
この辺に来るかと待っていると、ちょいッと手前に落っこちるようだ。
でもまあ、こういう取り合わせで演奏するのは難しいだろうね。
この作曲家は多作で様々な分野で美しい作品を残している。
決してヴァイオリン協奏曲第1番やコル・二ドライやスコットランド幻想曲だけの作曲家ではない。
でもブラームスに3年遅れで生まれ、ブラームスの死後20世紀を生きた長寿の作曲家は死ぬまで調性音楽を作り続けた。
それは自分の感性に素直に生きた人なのだろうね。
円満さは、棘を持たないバラのように飾るには便利だけど、それだけでバラの特性をひとつ失っている。
これ以上彼の音楽が、復活される気配はないのかも知れンね。
美しいんだけどなあ。
もちろんこれだけの曲だから、この曲はヴァイオリンとヴィオラの二重協奏曲としても演奏される。

ここではクラリネット-ヴィオラ版の第2楽章

 

 

 

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コメント 1

SU-SAN

クラリネットの活躍する曲には
興味津々です♪。
じっくりと聴かせて戴きます♪。
by SU-SAN (2012-10-26 15:26) 

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