ベスト センティメンタル [音楽]
スクリャービン/3つの練習曲OP.2第1番嬰ハ短調
最初の1音から憂いが滴るような音楽。
しかし主旋律のセンチメンタルな曲線を支える左手のもう一つの旋律線がせめぎ合いながら白とピンクの表裏を持つ花びらが舞い落ちてゆく。
表は裏に裏は表に哀しみと愁いが交差しながら背後から追いすがるような声を断ち切って消え入る。
3分、ピアニストによっては2分ほどの曲だけれど、耳にすればどこかで聴いた思いがするかも知れない。
過去に聴いたことがなくても、そのような感じが何処かに残る。
人種を問わず、人の感性を構成するものの中にある感傷という要素を音符に変えたもの。
最近。
希代のテクニシャンであるアムランのスクリアビンを聴いていて、何処か心に引っかかっていた違和感。
後期のソナタにはない、感傷的な響き。
彼のピアノの響きには調和があるけれど、その背後に蠢く時代的な感傷が聞こえない。
アンコールピースとしてこの作品はロシア系のピアニストが良く弾く。
リヒテル、指揮者になったけれど、以前はさかんにこの作曲家をとり上げていたアシュケナージ、娘婿のソコロフ、ラフマニノフ、ラフマニノフと師弟関係にあったホロヴィッツ…その弟子ルース・ラレード…
小品だけにソナタのようなものよりも自由に弾かれる。
それでも、受け継がれる音の中に残るものはそれぞれの中にもともとあったセンチメンタリズム。
右手と左手のバランスを崩壊のギリギリまで突き詰めた雄弁な左手。
桁外れな表現力。
ホロヴィッツの定番で。
今年はお世話になりました。
来年もよろしくお願いします。
良い新年をお迎えください。
by Loby (2012-12-29 21:07)
このエチュード、とてもすきです。ロシア文学風で、とても白樺の林が合います。
by アヨアン・イゴカー (2012-12-30 13:50)