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暑い季節のベートーヴェン [音楽]

暑熱は36度を超え、せっかくの休みに拘わらず、仕事を持って帰り、遅く起きた朝、風が吹いているような音にうながされ、窓を開け放って風を入れようとしたら、雨が降っている出はないか。土地柄暑いのには馴れてると思ったけれど、ちょっと付いていけないなあ。

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そんな状態で残った書類を眺めながらインナーを耳に詰め込んだ。
沢山の類型を聴くとある時期に典型を聴きたくなる。
ラズモフスキーを手に取りる。アルバンベルクSQ。
妻とまだ二人だった頃、フランスで旦那さんの(ヤン・フォス)版画が欲しくて叔母の家に行ったとき、彼のアトリエに響いていたカセットデッキの演奏が素晴らしくて、当時まだ初期の6曲しか聴いたことのなかった彼らがライブで演奏したテープだった。
まだ、中期の録音に手を付けていなかったのかも知れない。
バリリSQやスメタナSQ、旧ジュリアードの演奏で馴染んでいたけれど、ラサールSQほど先鋭ではなく、スメタナほど角が取れてもいない。ボクの持っている音を聴くときの間(息づかいのような感覚)となーんかしっくり来る。

ラズモフスキー第1番(弦楽四重奏曲第7番ヘ長調op.59-1)

ロシアのラズモフスキー伯爵に請われて作曲した3曲の最初の曲。
当時の感覚からはハイドンやモーツァルトの傍系という理解であったのかも知れないが、できあがった代物はとんでもない音楽である。
とにかく後期の形式ではなく、音楽の極めて個人的な深みが普遍へ昇華するそのための容れ物に過ぎなくなった楽章形式とはまだ隔たりがあるものの福徳円満さはどこにもない。
そして歌いきるまでが長い。400小節を超える第一楽章なんかそれだけで一曲の作品である。
全ての楽章がソナタ形式。
うーん。
理解されたかはちと疑問である。





第1楽章 アレグロ 何とも恰幅が豊か。
第2ヴァイオリンと中低音楽器(ヴィオラ)のフォーマットにのってチェロが主題を呈示する。このチェロソナタのような広々と両手を広げた音楽の腕の中に主題を受け継ぐヴァイオリンが抱かれ、ゆっくりと円を描きながら歌う。
ここが好きですねえ。
展開部ではかなりの力業が音楽の存在感を示す。
後期のように音達が心に直接仕えているような霊感はないけれど、構成された音構造がそれにふさわしい器の中に確信的に盛られている。 このままあの特殊な内省の世界に入り込んでゆかなくても、ベートーヴェンはやはり孤高の巨人になりえた。
鏤められた旋律は歌いしなやかに流れる。
後のシンフォニーよりも遙かにシンフォニック。

この長大な第1楽章に4つの楽器の表現が目一杯詰め込まれている。
そして冒頭の主題からは馴れる展開部では無垢の生木から削りだしたようなフガート。

第2楽章 アレグロ ヴィヴァーチェ エ センプレ スケルツァンド簡単ではないにしろ、長くなるので簡単に書いているけれど、第2楽章のスケルツァンドは今でこそボクらはブルックナーを通過している耳を持っているのであり、当時非難囂々だったこの音の跳躍から、息づく音達の歓喜と哀切を聴く。

第3楽章 アダージオ モルト エ メスト-アタッカ





ヘ短調の美しいアダージオ。
緩徐楽章には古典の響きの中に晩年の魂の昇華に至るような音楽の流れの片鱗が少しはあるけれど、行きつくところは精緻な抒情的な歌。
それにしてもよくこんな旋律が頭に浮かぶものだ。
主題がチェロに移ったときの美しさは、暖かく幅広く、深い。
ラズモフスキーに敬意を表した最終楽章のロシア民謡のテーマまでは第1ヴァイオリンのカデンツァからアタッカで切れ目無く繋がる。

こういう聴き方はどうかと思うむきもあるだろうが、ボクはまず、第3楽章を聴いた。
そして第1楽章のスケールを改めて聴き直し、今は第2楽章が大好きなのです。
第4楽章 テーマ ルッセ、アレグロ
第4楽章は…うん。ロシア民謡です。はい。
YouTubeでは色々楽しめるけれど、東京クワルテットの演奏があった。磯村和英(ヴィオラ)と池田菊衛(二代目の第2ヴァイオリン)が今年の6月に引退したのを機に、残ったビーヴァー(第1ヴァイオリン)とチェロのスミスは新たにメンバーを募らず、この素晴らしいSQの歴史に幕を引いた。



ベートーヴェン:「ラズモフスキー」四重奏曲集(2CD) [Import] (STRING QUARTETS RAZUMOVSKY OP 59 1-3)

ベートーヴェン:「ラズモフスキー」四重奏曲集(2CD) [Import] (STRING QUARTETS RAZUMOVSKY OP 59 1-3)

  • アーティスト: Ludwig van Beethoven,Tokyo Quartet
  • 出版社/メーカー: Harmonia Mundi Fr.
  • 発売日: 2005/11/07
  • メディア: CD
String Quartets Op.59/1-3 'razumovsky'

String Quartets Op.59/1-3 'razumovsky'

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Praga Czech Rep.
  • 発売日: 2000/02/08
  • メディア: CD

String Quartets Op 74 & Op 59 Razumovsky

String Quartets Op 74 & Op 59 Razumovsky

  • アーティスト: Ludwig van Beethoven,Turner Quartet
  • 出版社/メーカー: Harmonia Mundi Fr.
  • 発売日: 2001/12/11
  • メディア: CD
ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 「ラズモフスキー第1番」

ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第7番ヘ長調 「ラズモフスキー第1番」

  • アーティスト: アルバン・ベルク四重奏団,ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1998/04/29
  • メディア: CD

ハイドン:弦楽四重奏曲第77番「皇帝」/ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」

ハイドン:弦楽四重奏曲第77番「皇帝」/ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」

  • アーティスト: ウィーン弦楽四重奏団
  • 出版社/メーカー: カメラータ・トウキョウ
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: CD


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コメント 4

PopLife

日の沈む夏のヨーロッパならきっとクラッシックMusicも
似合いましょうが、日本の夏には似つかわしく感じないのは
私だけでしょうか?ではまた、ありがとうございました。
by PopLife (2013-08-27 09:56) 

hiro

こんにちは。
ベートーベンはいつ聴いてもいいですよね!
ほかの作曲家もそうですが・・・。
ところで、いきなりこんな質問で申し訳ないのですが、
アマゾンのリンクが張ってありますが、
「画像とテキスト」どうやって組成させているのですか?
よし良ければ、教えてください。
by hiro (2013-09-08 14:55) 

hiro

Mineosaurus さん
さっそくのコメントありがとうございます。
なんとか巧くいきそうです。
今後ともよろしくお願い致します。
by hiro (2013-09-08 22:29) 

Silvermac

スキン、迫力がありますね。
by Silvermac (2013-09-19 21:33) 

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