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祖母の家 [One's Boyhood story]

 子供の頃夏休みがくると、ボクは父方の祖母の家にバスで遊びに行った。
小学低学年のボクにとって、その頃祖父母の家まではちょっとした旅行であった。
 ボクは幼稚園時代にドングリの実を大量に食べ、バスの中で大量の血を吐き、バスガイドさんを失神させて以来、バスに乗ると酔うようになった。
旧県道を2時間くらいかけて、未舗装の道をごとごとと揺られていった。 
村の中心にあった小学校の東門前で降り、西の門に至る県道の対面にあった祖父母の家までリュックを背負って迷走した。
手には捕虫網と三角缶、古い石造りの橋の傍には鍛冶屋があって、そこから熱そうな火花が道路際に花火のように散るのを眺めた。
さっそく現れたオニヤンマが巨大な緑色の複眼をこっちに向けて再び戻ってくるのを散々待ってから、距離にして100メートルもない祖母の家の玄関先まで1時間くらいかけて辿り着いた。

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台風の過ぎた日 [One's Boyhood story]

     Y.Y.へ


 その年の3番目か4番目の台風の後。ボクらは無謀にもS川の河口を見に行った。
まだ治まるはずのない水流が広がり荒れた海へ、後から後から続くうねりを抱え上げては巻き落とすように繰り返しながら、川の水は塩を薄めてしまうような勢いで雪崩れている。
 ボクらは、無謀にも、意味もなくその流れを横切って向こう岸に泳ぎ渡ろうとしていた。
「ボクが下手(しもて)を泳ぐよ。大きな波が来たら立って泳ぐんだ。かなり流されるから川を遡るつもりで上へ上へ」
「わかった。」
冒険という言葉のヒロイックな響き酔った二人の小学生は半ば死への扉を開けていた。

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イチジクの木 [One's Boyhood story]

 ボクの家の隣には、昔医者が住んでいて、その家の裏手の広い庭には洗濯物が干してあった。
その洗濯物の中に、その医者のとてもでかい枕カバーが干してあって、その座布団クラスの大きな枕カバーを掛ける枕をして寝るその医者というのは、どんなにでかい頭なんだろうと、お隣さんでありながら子供のボクとは時間的に出会う機会もなく、一度も姿を見たこともないその医者の巨大な姿を想像して、ちょっと恐くなったことを覚えている。

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子供の頃の映画とボクと [One's Boyhood story]

ボクの子供の頃には、どこの町にも2~3軒の小さな映画館があった。
ボクの住んでいた町もそれは同じで、いつの間にか一つ減り、二つ減ってボクが高校に通うために高知市内に汽車通学をはじめた頃には最後に残っていた一軒も、廃館になった。
その最後まで残っていた映画館。小学生の小遣いでしょっちゅう映画が見られたわけじゃない。
でも、ボクはその映画館によく出かけた。
その映画館の切符売り場の左隣にはがらんとした広い倉庫があって、そこで
ランニング姿のおじさんが大きな映画の看板を描いているのを見るのが好きだった。
耳に短い柄の絵筆を引っかけ、左手の指の股に4本の仕上げ用の細い筆を挟んでいた。

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 [One's Boyhood story]

 暑かった。その年の夏、ボクは2つ年下の従妹を連れて、捕虫網を片手に雨上がりの午後の山道を駆け上がった。

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