木漏れ日の中の集い [音楽]
シューベルトはピアノとヴァイオリンのための曲を6曲残している。
中でもこの曲は大幻想曲ハ長調D934についで長い曲で、シューベルト19歳の青春の光りと、外に誇るのではなく、ごく親しい愛すべき家族や友人とともに楽しむための親和に満ちていて、好ましい。
緑の芝生が美しい小さな庭の木陰で奏される集いのための作品だろうか。
ヴァイオリン・ソナタ第4番と呼ばれることもあるようだ。
ベートーヴェンのクロイツエル・ソナタ以来ヴァイオリンはこの種のソナタでピアノと対等の力を求められるようになっているが、この曲に必要なのは熟達したわざのせめぎ合いではなく、純粋で美しい響きだ。
バイオリンとピアノのためのソナタ、作品162、遺作
第1楽章 アレグロ・モデラート
第2楽章 スケルツォ(プレスト)
第3楽章 アンダンティーノ
第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
- アーティスト: クレーメル(ギドン),シューベルト,アファナシエフ(ヴァレリー),マイセンベルク(オレグ)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2004/06/30
- メディア: CD
この頃のクレーメルは、いまは完全にコントロールしている自分のソノリティの持つきつさを少しもてあましたところがあって、時としてそれが即物的に乾いた音楽に聞こえる。
でも、シューベルトの持つ自由さと彼の特質である深い読みと本質に突き刺さってゆく青白い熱はこの頃から巧くかみ合っている。
彼はダヴィド・オイストラフ門下の俊才であったが、西側の音楽解釈に自分との大いなる一致点を見いだし、自由の空気に触れた。
鋭さはそのままに現実の体験は彼を観念の拘束から完全に解き放った。
彼自身の切れ味は師オイストラフよりもむしろハイフェッツに近い。
コメント 0