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抒情の奔流-ラフマニノフのシンフォニー2 [音楽]

交響曲第3番イ短調op.44

第1楽章:レント~アレグロモデラート-アレグロ
第2楽章:アダージオ・マ・ノントロッポ-アレグロ・ヴィヴァーチェ
第3楽章:フィナーレ-ヴィヴァーチェ-アレグロ(テンポ・プリモ)-アレグレット-アレグロ・ヴィヴァーチェ

音楽のイデオムが次世代へのつながりを想起させる。レントは滑らかに流れ、ラフマニノフであることを裏切らないけれど、
底には表題的な音楽の響きがあり、弦楽器の時に浮き上がって使われるヴァイオリンやチェロの瑞々しさに印象的な近代の匂いがする。
ラフマニノフはこのイ短調という調性にも拘わらず、ほの暗さを避け、その抒情は幅広く明るい陽の光やオークの深い緑の葉の裏に生まれる幾重にも重なった影の揺らめきすら感じさせるような『森』を想起させる。

精神にダメージを負った歌ではない。
リリシズムがこれほど整然とした形になっている音楽もあまり聴かない。
第2楽章のハープのグリッサンドの下を流れる息の長いホルン。
まどろんだ夢をさませるようなヴァイオリンの一閃。
見事な弦楽のカーテン。
これは、明らかにシカゴやフィラデルフィアのゴージャスなサウンドを想定しての音楽。
洗練がラフマニノフのノスタルジアを遠ざけ、スマートすぎると敬遠する人もあるかも知れない。
でも、ラフマニノフはここまで行き着いたのです。
ドイツ古典的な4楽章の形式を棄て、3楽章のフランス近代の交響曲形式を選んだ彼は亜流になることを怖れず、自分の中にある情緒的な旋律の美しさを信じ切っている。
オーケストラが歌う音楽としてこの作品は第2番よりも明確で完成度が高い。
第2ピアノ協奏曲より第3ピアノ協奏曲が好きなように、ボクは第2番交響曲よりこの第3番が好きですね。
第3楽章の推進力豊かな弦楽には珍しく頭が揺れる。
幾重にも重なる色彩と抒情的な旋律の破片はそれぞれの楽器の表情が見事に取り込まれていて和音のピアニスト、ラフマニノフのピアノを想起させる。
映画音楽的といわれようがいいじゃないですか。
この作品にはラフマニノフの苦悩が見えない。
表題音楽的であるけれど、ヴォーン・ウィリアムスやブリテンのように響くこともあり、楽しみという音楽的要素がこの作品の長さを救っている。

ボクは今、アシュケナージが旧コンセルトヘボウOを振っている録音で聴いている。
弦楽が豊かなこのオーケストラのもっとも幸福な特徴が生かされていて素晴らしいです。

ラフマニノフ:交響曲全集

ラフマニノフ:交響曲全集

  • アーティスト: アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 アシュケナージ(ヴラディーミル),ラフマニノフ,アシュケナージ(ヴラディーミル),アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1996/01/25
  • メディア: CD

ラフマニノフ:交響曲第3番

ラフマニノフ:交響曲第3番

  • アーティスト: ボールト(サー・エードリアン),ラフマニノフ,ヴォーン=ウィリアムズ,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/11/21
  • メディア: CD

ラフマニノフ:交響曲第3番

ラフマニノフ:交響曲第3番

  • アーティスト: サンクト・ペテルスブルク・フィルハーモニー管弦楽団,ラフマニノフ,ヤンソンス(マリス),オブチャレク(ウラディーミル)
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/02/24
  • メディア: CD

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はっこう

ラフマニノフ ある愛の調べ
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id329897/

が公開中なんですね。
DVDになったら見てみたいです。
by はっこう (2008-04-23 18:25) 

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