夜のガスパール [音楽]
「ベルトランをご覧、そこには全てがあるよ。」マラルメがアロイジウス・ベルトランを評した言葉です。
シュールレアリズムの先駆として、この忘れられた散文詩家はフランスの生んだ様々な詩人達にはその真価を知られている。
ボクはアンドレ・ブルトンからベルトランを知り、「夜のガスパール」という名の散文詩集をお茶の水の駅の小さな本屋で確か渓茗堂とかいう、本屋で見つけて買った。その本屋は多分まだあるんじゃないかと思うけれど、どうかな。
以前ボクはアナログレコードの置き場所に困り、長女の成長で部屋を開けるために大量のレコードをオークションで売ったことがあって、その時にレコードに付けて売ってしまったのでした。
同じ本をオークションで見つけたけど、とんでもない値段になってた。
で、そののレコードって言うのは当然、ベルトランの同名の詩をモチーフにしたラヴェルの夜のガスパールが入ったものだった。いま、それはCDのよりクリアな音源で聴ける。
第1曲:オンディーヌ
第2曲:絞首台
第3曲:スカルボ
もともとの詩集は64篇からなっているけれど、ラヴェルはその中から、3曲を選んでいる。
オンディーヌは、記憶は定かではないけれど、人間に恋をした水の精で、その男にオンディーヌは自分と結婚して湖の支配者になって欲しいとプロポーズするんだけど、男はにべもなく断るんだね。
オンディーヌは悔しがって、しばらくは泣いているんだけれど、そのうち狂ったように笑いはじめ、やがて激しい雨の中に消えて行く。狂気と非現実が重なって妙な浮遊感覚を醸す詩でした。ピアノはその笑いの狂気を素晴らしく表現しています。
絞首台 印象派の白眉的作品。暗鬱で魂の抜けた後の骸が腐食し、虫がたかって行く鬱々とした死後の無惨が醸し出されている。ピアニストの技量と感情移入がどれだけこの曲を弾ききることができるか、退屈に思うのならそれは作品のせいではないと思います。
スカルボ 丸っこく、はしっこい悪魔。そして稀代の超絶技巧が求められる作品。
まともに弾けるピアニストは現代でも多くはないのではないでしょうか。リストのメフィストワルツ第1番のイメージで作られています。不条理なほどの長1度の連続、急速な連打音に、変幻自在のアルペジオ。めちゃくちゃ難しくてぁ、ここもう一回聴こうと何度も同じところで立ち止まってしまう。
くすんだガス灯の光の中に不気味に飛び回る小さな悪魔。振り返る仄白い顔と赤い口元。笑っている口元は耳までつり上がる。
アルゲリッチが最高ですね。これに関しては、直感的な彼女の演奏がその直感を支えてあまりある技術とある意味悪魔的な彼女の情熱の炎(ほむら)がシンクロします。
夜のガスパール~アルゲリッチ コンセルトヘボウ・ライヴ(1978~79)
- アーティスト: アルゲリッチ(マルタ),ラヴェル,シューマン
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2008/03/26
- メディア: CD
- アーティスト: ミケランジェリ(アルトゥーロ・ベネデッティ),ドビュッシー,ラヴェル,ショパン,ベートーヴェン,シューマン,リスト,ガヴァッツェーニ(ジャナンドレア),ローマ放送交響楽団
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1995/12/01
- メディア: CD
ご訪問&nice!ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
ラヴェルの夜のガスパール、素敵ですね!!
by 恐竜おとこ (2008-06-03 14:22)