我が道への復帰 [音楽]
バラキレフ/ピアノソナタ第2番変ロ短調(1900-05年)
第1楽章 アンダンティーノ
第2楽章 マズルカ=モデラート
第3楽章 インテルメッツォ=モデラート
第4楽章 フィナーレ=アレグロ・ノン・トロッポ
好戦的民族主義者としてムソルグスキーやボロディン、キュイ、リムスキー・コルサコフらのリーダー的存在として5人組を構成した後の挫折から楽団を去ったバラキレフが音楽会に復帰して後既に老境に達した彼の到達点が見える作品。
復帰してからの彼は民族的な好戦的集団は組まず、独自の音楽の行き着くべき場所を見いだしたかのように次々と作品を生み出したのだが、このピアノソナタ第2番はそんな彼の枯淡の色合いと、抒情とかロマンとかノスタルジーから抜けきった音の響きの世界が聴ける。
第1楽章はソナタ形式ですが、まるでスカルラッティのソナタを聴いているようなバロック的な音列で、その中にセピア色の歌が切れ切れに息をつくように鏤められる。
第2楽章のマズルカは本来ならばスケルツォ楽章としての位置にある。
夢幻的な間奏曲は第4楽章のシューマンを思わせるフィナーレへの序章のようで、第1楽章のような静けさとスカルラッティのソナタを思わせる優雅で心拍的な印象のリズムが気持ちを静めてくれる。
切れ目なく奏される第4楽章は非常に技巧的でありながら明晰で理知的である。
バラキレフを技巧だけのプロフェッショナルとして扱い馴れてしまったピアニストは、どうしてもメカニックな演奏になりがちで、また、そういう録音しか耳にできないのは残念の極みだけれど、マルカートで急がない堅実な演奏で聴けば、素晴らしくファンタジックな楽章であると気づくはずです。
メロディというものを民謡とかに寄りかかっていた彼がそこから一歩抜け出したところで手に入れたピアニズムの魅力が第4楽章にはあります。
ピアノソナタとしては4楽章を取ったオーソドックスな形ではあるけれど、集合した要素は過去とは異なる面をみせながらさらに一昔前の世界を垣間見せる。
我が道へつながるものをそこに見つけたのですね。
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