角のない試作 [音楽]
モーツァルト/ヴァイオリンソナタ第27番ハ長調K.303
第1楽章 アダージオ-モルト・アレグロ
第2楽章 テンポ・ディ・メヌエット
呟きと明朗な歌声が交互に聴かれる。第1楽章は緩やかな歌に始まる。
モーツァルトの序奏部分の美しさとかすかな哀愁。そこには自然な息づかいがあり、なだらかな裾野からやがて上に登ってゆくように、音楽はそれ自体に心があるようにあるときは翳り、あるときは微笑み、あるときは声をあげて笑い転げ、すぐにその笑い顔から涙がこぼれる。
第25番や26番よりももっと斬新な構造を持ちながら情緒不安定。
情景と状況がそのまま音になって流れペン先から生々しく旋律が趨る。
角のない円かな序奏部と主部のスムーズな交代。ユニークな形式の表明。
でも、これからこれで行くという固い決意があるわけでもない。
第2楽章のメヌエットのテンポには激しさも棘もなく、ただひとしきり踊り続けた少女が上がった息を整えているようなそんな穏やかさがある。
10分足らずの小さな花です。
次に来る第28番の、あの冷涼としたメストの世界とは隔絶された1778年2月のマンハイムでの『パリ ソナタ』と呼ばれる6曲中3番目の作品。
モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第27番・第28番・第33番・第42番
- アーティスト: 内田光子,モーツァルト,スタインバーグ(マーク)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/03/23
- メディア: CD
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第24番&第25番&第26番&第27番&第29番
- アーティスト: パールマン(イツァーク),モーツァルト,バレンボイム(ダニエル)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/12/14
- メディア: CD
楽天的だけれど、パールマンの屈託のない音色はこの曲にはよく合う。
この人のヴァイオリンのあかるさは天性のものですね。
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