憂いの変奏 [音楽]
モーツァルト/ヴァイオリンソナタ第33番ヘ長調K.377(ヴァイオリン伴奏付クラヴィールソナタ)
第1楽章 アレグロ
第2楽章 アンダンテ(主題と6つの変奏)
第3楽章 テンポ・ディ・メヌエット
彼の時代のウィーンの夏がどんなに暑かったかは知らないけれど、屋外で自身がピアノを弾きながら(まだ現代のピアノではなかったにしろ)、伴奏するヴァイオリンと協奏的な演奏を汗ひとつ書かずにやれるようなものではなかったと思う。
でも、出来上がっている曲の涼やかさが、何のストレスも感じさせないレベルなのが凄い。
暑くっても気なんか散ってないんだね。
ソナタ形式のヘ長調のアレグロは、活発なピアノと協奏的に絡むヴァイオリンが最も美しく聞こえ、荒々しく動くテンポで渦巻く風のように駆け抜ける。
最も長い中間楽章は、やはりこの作品の中心。
ニ短調の憂いは濃く、6つの変奏曲が奏される。
そのシチリアーノ風の第6曲は後の弦楽四重奏曲で姿を変えているようにも思うが、描く音楽の大きさが異なっている。
この様な憂愁と哀しみに縁取られた美しい緩徐楽章をモーツアルトは苦もなく書いてみせるように思う。
いくつも聴いているのに、そのどれもが同じ色の憂いではない。
それが奇跡のように思えてしまう。
彼は自分の中にあるものを音楽として出しているのではなく、もっとべつの次元の人の領域ではない場所の引出を開けて取り出しているのではないかと思ってしまったりする。
このニ短調は結晶のように哀しみが氷結し、幾方向にも延びた細かな冷たい棘が触れる者の心にに刺さる。
目だたないほど気づかれないほど小さく細い棘だけれど、それを知覚する人には大きな痛みを感じさせる。
そして、起こった全ての哀しむべき事象を明るく癒すような幼く軽く愛らしいメヌエット。
単純さが救ってゆくものは果てしなく大きい。
何の解説もなく通られる曲がまだモーツアルトにはたくさんあって、際限がないように思うけれど、このK.377の第2楽章とそれに続く癒しの第3楽章は凄く支え合っているようにボクには思える。
月並みだけど、いーい曲です。
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モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第32番&第33番&第36番&第40番
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モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第27番・第28番・第33番・第42番
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アレグロ・・歩くような速さで?(でしたか?)
音楽をかじっていたのに、モーツァルトをわかっていない
自分が恥ずかしいです!こちらのブログで勉強させて
いただいてますよー♪
by ピロシキ (2008-11-21 15:53)
歩くような速さはアンダンテではないでしょうか。
「分かる」っていうのは難しいことですね。ボクは分かってないでしょうね、多分。そのことはちょっと今度書こうと思ってました。
音楽は好きか嫌いかで、日本人の聴き方は理屈ッぽ過ぎるとドイツ人の画家にいわれたことがあります。
ちなみに彼はクラシックは演歌であると言いきりました。
ボクはモーツアルトは大好きですが、ジュディ&マリー時代のYUKIも大好きです。
by Mineosaurus (2008-11-21 20:43)