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弦楽五重奏曲のジュピター [音楽]

弦楽五重奏曲第3番ハ長調K515

第1楽章 アレグロ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 アレグレット・テンポ・ディ・メヌエット
第4楽章 アレグロ

K.515のハ長調の弦楽五重奏曲(第3番)はモーツァルトが31歳、1787年だから三大交響曲の前年に踵を接して作曲されている。
同年に作曲されたK.516ト短調の弦楽五重奏曲(第4番)はあたかもジュピターと40番交響曲(大ト短調)と同じような位置づけになると考えるのはうがちすぎかなとも思うけれど、このK.515は一言で言えば雄大且つ輝かしい曲想と清朗で明快なスタイルであり、アポロ的であるという点でやはり、ジュピター(第41番交響曲)にボクのイメージは重なる。
以前はそう単純に思っていたこともあった。

それでも大部分にあってはK.516が独特の暗い調性に支えられたデュオニソス的悲想美を持っているのとやはり好対照だとも思う。
K.516はすでに一度書いたことがある。
ここではK.515を取り上げたのだけど、この曲も陽の部分を代表する孤峰だろう。
て言うか、基本的にチェロの音色が好きで、この楽器の特徴をうまく引っ張り出されると嬉しくなるのです。
この曲はチェロの活躍する場面が非常に多い。
これにはプロとしての彼のクライアントに対する野心的なアプローチです。
彼がなりたかった宮廷作曲家の地位をチェロの愛好家であったフリードリヒ・ヴィルヘルム2世にアピールするにはチェロのパートを重要視するのは不可欠な改訂作業だったに違いない。
でも、この曲は作曲者自身のそんな色気とは全く関係なく、はじめからこの形で存在していたかのように自然な歌を歌う。
弦楽五重奏曲というジャンル自体は彼の傑作の森の中ではいささか地味で晦渋でもある。
でもここには31歳の若さで創造した、圧倒的で集約されきった無駄のない古典的様式があり、その中で軽々と飛翔してみせる音楽の翼がある。
特異とも言えるチェロとヴァイオリンの対話を支えるヴィオラの歌。
楽観的な聴き方をすればこういった肯定的な表現に終始するかも知れない。
でも、時折横切る胸をつぶされるような痛切は何なのだろう。
軽々とした歩みの中に時折立ち止まるその足許は大地に深々とめり込んでいる。
楽天的で軽快なモーツァルトの暗く俯いた一瞬の表情にK.516に感じるものと同じ哀しみが掛けだそうとしては踏みとどまる。
作品に込めた作曲者の時間の中には楽しく幸せな時間ばかりではないことが聴き取れる瞬間が幾つもあってなまなましい。
ヴィオラがひとつ増えただけで、モーツァルトは弦楽四重奏曲の傑作『ハイドンセット』で行き着けなかった表現の幅を手に入れ、より、彼自身の人間を覗かせるものを作り始めた。
といえそうだけど…どうだろうかな。
この天才は、ミューズに愛されすぎていて、音楽から実像がはかりにくい。

 

モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番・第4番

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モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番&第4番

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