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フィリードリヒ・グルダ [音楽]

早いもので20世紀が最後の生粋のウィーン生まれのピアニストを失ってからもう9年が経った。
モーツァルトを等身大で弾けるおそらくは最後のピアニストだったと思う。
3羽ガラスと言われたデムスはアンサンブルの中で自分の音楽の方向を見いだし、スコダは古楽器に自分の血のつながりを見つけた。
グルダは音楽そのものが持つ即興性と創造性を既成の音楽の中でもまるでその作曲家が生きていたら、その日はこう弾いたに違いないと出も言いたげに、バッハをベートーヴェンをそして何よりモーツァルトをまるで今できた自分の音楽のように弾いた。
そにはスコア上の約束事の中で「とんでもない!」と専門家が眉をひそめ、やれ、問題児だ異端児だと言われ続けた。
彼を批判する日本の音楽評論家はたくさんいたけれど、彼のモーツァルトを非難する声はボクはあまり聴いたことがない。
無茶もし、やりすぎもし無理もする。
でも、それらはその時々の自分の心の中の音楽の居所によって変化していたに過ぎないのじゃないか。
彼のモーツアルトは生きている。
クラシック音楽が作曲家の書いたスコア通りに弾くことを金科玉条にしているならば、レコードはCDは一枚あれば事足りる。
人間が演奏するかぎり、音楽はその演奏する人間を通って再生される。
グルダの音楽はその通り道がモーツァルトやバッハやベートーヴェンに最も似ていたのかも知れない。
この動画はチック・コリアとジャスピアノのインプロヴィゼーションのコンサートをやったときのものだ。


リクエストで弾かれたこのアリアはタキシードを着てピアノに正対する正統派の姿からはほど遠いけれど、ピアノで弾かれるバッハとしては何て素敵なんだろう。
子供のような彼の瞳の輝きの中に自分を通って出てゆく音楽が見えるのが楽しくて仕方がないような、そんな彼の無辜が見える。

 

モーツァルト・アーカイヴ

モーツァルト・アーカイヴ

  • アーティスト: グルダ(フリードリヒ),モーツァルト
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2006/03/22
  • メディア: CD

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、第21番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、第21番

  • アーティスト: グルダ(フリードリヒ),モーツァルト,アバド(クラウディオ),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/10/24
  • メディア: CD

バッハ・アーカイヴ

バッハ・アーカイヴ

  • アーティスト: グルダ(フリードリヒ),バッハ,グルダ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2008/12/24
  • メディア: CD

ザ・ミーティング

ザ・ミーティング

  • アーティスト: チック・コリア,チャーチル,デイビス,パウエル,ブラームス,グルダ(フリードリヒ)
  • 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 1994/11/02
  • メディア: CD

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コメント 2

SilverMac

チック・コリアは好きなピアニストですが、グルダとのコラボは知りませんでした。
by SilverMac (2009-06-29 08:33) 

Francis

いつも楽しい音楽、ありがとうございます。
by Francis (2009-06-29 19:52) 

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