幻想的ブリッジ [音楽]
フランク・ブリッジ/ピアノ三重奏曲第1番(幻想的三重奏曲)ハ短調
第1楽章 アレグロ モデラート マ コン フォーコ
第2楽章 アンダンテ コン モルト エスプレッシオーネ
第3楽章 アレグロ スケルツォーゾ
第4楽章 アレグロ モデラート
ようやく手に入ったCDよりもYouTubeで聴ける演奏の方がライヴの粗さはあるけれど、メリハリがあるものだった。
第2楽章の静謐さとブリッジの歌はアスレイ・ヴァスのピアノがいい味を出しているCDのがいいなあ。
でも、昔ボクが聴いていた演奏は無論もう販売すらされていなくて、高みに向かって押し寄せる波のようなアンサンブルの切れは今の演奏に望むべくもない。とても上品な演奏である。
もっとも、昔聴いた演奏を今のボクの聴き方で美化してしまうためかも知れない。
第1楽章のファンファーレから仄暗くうねるようなアンサンブルが重なり、下降するピアノが弾き弓に合わせるように楔を打つ。
中低域の弦楽の重い擦過音がピアノと溶け合ってゆく。
ブリッジ特有の振幅の大きいロマンティックな音楽の片鱗は伝わる。ラフマニノフのような響きを生み出しながら背景にはどこまでも広がる原野があるのではなく、突然切り立った断崖の前方に広がる闇を見させられているように浮遊する。1音の意味にこだわりすぎてテンポが遅い。
ブリッジはこの作品を含めて短いものを入れればヴァイオリンとチェロとピアノのトリオのための曲をたくさん残している。
この作品のように重いロマンの心象にシズム音楽の次には近代的な点描音楽に大きく揺り戻す。
幅が広いと言うよりも個性が2つあるように感じる。
彼の優れた弟子であったベンジャミン・ブリテンは師のロマン的側面の影響はあまり受けていないのに、師の作品を真逆の抒情性をもって自ら録音している。
『私はこういう心をもった師、ブリッジを愛している』といっているように聞こえる。
幾つもの顔を持ちながら、それぞれの顔がはっきりと異なる顔立ちを見せる。
小器用さを感じさせない正面突破の音楽が展開し、ボクはそのどの顔も正面から向き合える魅力に抗しがたい。
4つの楽章の中で第3楽章と近接し、間奏曲的な役割になる第2楽章の緩徐楽章の内省風景が美しい。
コントロールが効いたピアノと彼の得意とする中低域の燻された銀色の中から、磨かれた小さな金の粒が熱に融合することなく重なってゆく。
次のスケルツォも秀逸。
軽く生のままの生命感が躍動する。(はずなんだけど、今聴いているCDの演奏は一杯一杯みたいだ。)
幻想曲的な手法が採られ、第1楽章の主題が唐突に、蘇るように浮かぶ。
第4楽章は短いけれど全楽章に鏤められた同期で有機的に関連づけられており、違和感がない一体感がある。
このCDは彼の揺り戻した勢いで傑作となったピアノ三重奏曲第2番をメインに小品的なトリオを全て網羅している。
ブリッジの三重奏曲としてのガイド的CDであることは確かだ。
でも、もう一つ共感していない部分があるようでもどかしい。いいんだけど、毒がない。
YouTubeのこの演奏は第3楽章と第4楽章が続けて演奏される。
第2楽章を取り上げたいんで別のアマチュアっぽい演奏を選ぼうと思ったけれど、第4楽章には第2楽章のテーマも第1楽章のも再現されるのでこれが一番効率的かなと思って紹介。
2つ見つけたこの楽章の演奏では断然こっち。
Piano Trio No. 2 / Phantasie Trio / Minatures
- アーティスト: Frank Bridge,Ashley Wass
- 出版社/メーカー: Naxos
- 発売日: 2009/02/24
- メディア: CD(ボクが買ったのはこれ。一番下のがいいという評判)
Bridge:Piano Trios/Phantasy Qu
- アーティスト: Frank Bridge,Patrick Ireland,Dartington Trio
- 出版社/メーカー: Hyperion UK
- 発売日: 2001/05/08
- メディア: CD
- アーティスト: Frank Bridge
- 出版社/メーカー: Black Box
- メディア: CD
こんばんは。
フランク・ブリッジって初めて知り(聴き)ました。
全然違うのだけれど、曲の雰囲気が何となくフォーレのピアノ四重奏曲第1番や第2番を連想してしまいました。
by 松本ポン太 (2011-02-27 19:20)
松本ポン太様 コメントありがとうございます。ブリッジはイギリスの作曲家ですが、フランス音楽的な一面も持っています。ブリッジはフォーレとは違いますが、ピアノのアンサンブルとしてはちょっと似た雰囲気があるのかも知れませんね。
by Mineosaurus (2011-02-27 20:12)