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画きすぎた情景 [音楽]

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プフィッツナー/ピアノ三重奏曲ヘ長調op.8

第1楽章 強くそして火のように、あまり速すぎずに
第2楽章 ゆっくりと、引きずらないで
第3楽章 適度な速さで、演奏において幾分自由に
第4楽章 速くそして荒々しく

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非常に印象的な、情熱的なシューマネスクなイントロダクション。
プフィッツナーの室内楽は全体的に歌謡性に満ちていて、彼の立ち位置が基本的にリートのようなメロディアスなところにあることを際立たせる。
このピアノと高音のヴァイオリンの絡み、支えるのではなく切り裂くように割ってはいるチェロの存在感。
第1楽章は何度聴いても素晴らしい音楽であることに間違いはない。
なのに、というか異様に長い第2楽章の心理的構造は、まるでマーラーがモーツアルトの一言に1万語を持って表現しようとしたかのように、バランスなど考えなかったかのようにひたすら歌い尽くす。
膨大な抒情と内省がうねりながら、次から次へととどまることを知らない。
あまりに長く眠りすぎた後期ロマン主義の権化。
音楽は微細な色彩を余すことなく拾い上げ、簡潔さと新たな音楽的様式に完全に背を向けたまま、あまりに広げきった円の広さに閉じきらぬまま、どこへ行くのか判らなくなったようなこの第2楽章の整然とした複雑さは圧巻です。
画きすぎてもうそのキャンバスには髪の毛一本ほどの隙間もない。
そういえばnicht schleppen『引きずらないで』という標示はマーラーがよく使用したっけ。
長い序奏の後の主題はセンチメンタルでありながら折り目正しい抒情性に満ちていて楽章の中に何度も繰り返されるたびに深みをまして行く。
だけど、これほど語らなくてもいいじゃないか。
プフィッツナーのイマジネーションには本人が語りたいだけ語った後、ぷいと横を向かれたみたいだ。
第3楽章の冒頭のピアノから軽い。
スケルツオといっていい。この人のスケルツオは同時代の誰と比べても独創的で創造性と舞踏性に溢れている。
そこでもやはり歌がはっきりと聞こえてくるのは、くりかえしになるけれど彼の本質がシューベルトのようなドイツ・リートにあるからだと思う。
大胆なピアノ。
最終楽章はこれまた長い。
はじめ聴いたときはどこが序奏の終わりか判らなかった。
やっぱり開けっぴろげにはならない。
一端闇に向かって開かれたドアが瞬時に閉じられ、ゆっくりと闇に光を滲ませるように細いヴァイオリンの光線とピアノの単音がドアを細く薄く広げてゆく。長い序奏。
次第に音楽は白熱し、緩み堆積して熱を帯びる。
彼は単独のピアノ曲というのが凄く少ないけれど、この楽章や第2楽章のような息を詰めている時間が長い音楽には非凡でなければ支えきれない音楽の重さを苦もなく支えている。
聴き始めると疲労感が残るけれど、不思議によく聴く。
画きすぎているけれど、決して破綻していない。
音楽的霊感を支えるしたたかな技術の高さが光る。

 

比較的短く判りやすい第1楽章の輝きをどうぞ。

 

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