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アンダンテ・コン モート [音楽]

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手元に置いておけばよかったけれど、すり切れてもうほとんど遠くの方で鳴っているようなレコードだったからしかたがない。
ボクは晩年のミケランジェリの弾くモーツァルトには感心できなかった。
美しいけれど空虚だと感じていた。
だけど彼のベートーヴェンの協奏曲とりわけ第1番の鳴りきった音は嫌いではない。
ジュリーニと録音したベートーヴェンの第1番は好きでいまだによく聴いている。
でも、彼は何故か第4番を残さなかった。
ボクはいつかも書いたけれど、ベートーヴェンの協奏曲では第4番が一番好きである。
ついでにいえば次は第1番、第2番、スケールの大きな第3番。
いわゆる第5番『皇帝』は、弾くのを眺めるにはいいけれど、全曲聴くのはしんどい。
弾く人のための協奏曲だという気がするね。
その第4番ではボクはずっとミケランジェリの大昔のモノラルのライブ録音を聴いていた。
正式な録音ではなくて、どっかのラジオ局の誰かがテープに録ったものを録音したようなものだった。
ミラノ放送交響楽団(ホントにあるかどうか知らない。)とか言う名前だったか。
その第2楽章で聴かされた緊張と静謐の中を切り裂くようなピアノの閃きを忘れられず、以後のピアニストの演奏にずっとその再現を求め続けて落胆し続けている。
エレーヌ・グリモーのピアノに近い音質を感じたこともある。
今はこれまた古いけれど、SIR・クリフォードの演奏をよく聴く。
ロマンティックな行き方だけれど、この第2楽章の気分の沈潜から立ち上がる内省の階を高揚して駆け上がるピアノに当時聴いたミケランジェリのタッチに似通ったものを感じている。
ベートーヴェンをクリフォード・カーゾンで聴くことは正直あまりなかった。
ボクは第6番ソナタや第7番以外あまり名前付きのベートーヴェンのソナタをあまり聴かない。
DECCAやLONDONの録音は日本向けにそういう名前付きのものをよく販売していたのでそのせいかもしれない。
最近はピアニストが弾きたいと熱望した音楽がそのまま市場に出回る時代だから、ずいぶん昔の意欲的なものも聴けるようになった。
このオーケストラと瞑想的なピアノが交互に会話する音楽は本当に素晴らしい。
弦楽合奏のイデオムはただひとつ。
それがピアノの醸す音場によって微妙に色彩を変えながら支える。
カデンツァの緊張を孕んだ斜めに下降するアルペジオの部分はピアノ合奏の作品群の中で楽器に意思を感じる希有な体験をすることがある。
ミケランジェリの失われた(CDとなって聴くことができないという意味に過ぎないのだけれど)モノラル録音は、明らかに僕の感性が共鳴するような意思があった。
SIR・クリフォードの演奏にそれがあるとはいわないが、ロマンティックで瞑想的な次の楽派に大きく門戸を開いている。
演奏者の意図か、作品自体の持ち味か意見は分かれるだろうけれど、ボクは気に入っている。

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調OP.58より

 第2楽章 アンダンテ・コン モート

 

 

 

Beethoven: Piano Concertos No.2 & No.4

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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番、ピアノ・ソナタ第30&31番

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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番/第4番

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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番&第2番&第4番

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Silvermac

今日はクラシックを流しています。
by Silvermac (2011-08-06 10:59) 

アヨアン・イゴカー

第四と第五、全楽章大好きです。
第四の3楽章は、第2楽章の静けさや薄暗さを反転させる輝くような旋律の名曲ですね。
by アヨアン・イゴカー (2011-08-06 11:44) 

般若坊

出だしを聞いただけで ベートーベンだ!とわかる曲ですね。重厚で良い曲です。
by 般若坊 (2011-08-07 09:46) 

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