若き歌の影に [音楽]
シベリウス/ピアノ五重奏曲ト短調 Js159
第1楽章 グラーヴェ アレグロ
第2楽章 インテルメッツオ モデラート
第3楽章 アンダンテ
第4楽章 スケルツォ ヴィヴァーチッシモ
第5楽章 モデラート-ヴィヴァーチェ
1980年。
若きシベリウスが船乗りであった伯父が名刺に記していたJean=ジャンを自らのペンネームとして、ヘルシンキでの学生時代を過ごすようになってから数年。
様々な小品や未完の欠片がその周りに散らばる中で、この曲はその頃の彼のマイルストーンであった。
まだ自分の楽興をのせきれない楽章と霊感のままに描く音楽のバランスがとれているとは言い難い部分もあるけれど、彼の中に溢れて止め処がない歌が、吐く息の白い夜空に広がる星座のように広がって行く。
近代の気鋭の演奏家の共感に支えられた録音がこの曲の真価を聴かせるようになるまで正直相当の年月を要していると思う。
『嫉妬の夜』なる標題が付いているが、作曲家自身が付けたものか測りかねるけれど、どの辺のイメージなのか掴めない。
ピアノパートにはあまり目立つものはないけれど、弦楽の重奏は既に凡百の作曲家から遙かに抜けている。
若く幼げなアンダンテに流れる歌は陰影とユーモアに溢れ、その美しい数瞬に何度かリピートしたい衝動に駆られる。
先行する第1楽章の短い序奏から、彼しか書きようのない冷気を練り上げて火がつくまで待つような情熱はYouTubeの演奏でも聴き取れる。
残念ながらボクの好きなアンダンテや標題はここかなと思うフィナーレ楽章のパトスは何故かYouTubeのどこを探しても見つからなかった。
スケルツオの細かいピアノの動きは結構好きだな。
スケルツォ自体はちょっとなりきっていないような気がするけれど、この曲の聴き所は第5楽章だろうな。
旋律の有機的な繋がりはスムーズでとてもローカリティでありながら後の四重奏曲の舞踏を思わせる。
ロンド風にチェロが駆け抜けた間隙を埋めて行くピアノの閃きは美しく、晩年の旋律の螺旋が形作られてくる。
ヤンネからジャンへ。
若者の歌はその影に深い感性の襞を幾重にも重ねたパトスをまるでまだ湿った小枝に火がつくように美しい闇の中で逆走させる。
6曲のピアノのための即興曲作品5の第3曲マーチ風のモデラートが一瞬大きな炎になって目の前で燃え上がる。
第1楽章をどうぞ
Sibelius: Piano & Str Quintets
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Ultima
- 発売日: 2002/01/28
- メディア: CD
Piano Quintet / String Quartet
- アーティスト: Jean Sibelius,Anthony Goldstone
- 出版社/メーカー: Chandos
- 発売日: 1989/10/17
- メディア: CD
Sibelius Edition 9: Chamber Music 2
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Bis
- 発売日: 2009/09/15
- メディア: CD
凄い。
圧倒されました。
by glennmie (2011-08-12 09:20)
こうして ブログをやっているお陰で
クラシックを聴きながらコメントができるんですものね。。。
by ララアント (2011-08-13 22:28)
甲子園が終わると涼しくなるのがいつもの状況ですが、今年はどうなんでしょうかね。暑さで少しバテ気味なのに仕事量は増えてきて正直、休みたいです。1日ごろりちゃらりで猫みたいに爆睡していたい。
皆様ご訪問&nice、コメントありがとうございました。
by Mineosaurus (2011-08-14 06:21)