バッハにつながる糸 [音楽]
J.S.バッハ/幻想曲とフーガイ短調BWV904
バッハについてはあまり書かない。
あれほどの全方位的な音楽家は古今にいないと思っている。簡潔な構造性を印象づけつつ、折りたたまれた幾重もの楽想は引くもののほぐし方でその印象をドラマティックにもリリカルにも変化させ、演奏するものの時代性や個性で様々な色相を魅せる。
いわばよく磨かれた鏡のような作品。
深入りしてしまったら抜け出せそうにない。
楽譜は「よりしろ」であり、バッハに対して真っ直ぐに取り組む意欲が、「こう弾きたい」という修練や作為を超える。
そういう演奏を時々聴かせてくれる人がソネブロにいます。
ただ、核心を模索する中でリサイタルのように聴衆の前に立って、その時の試行と確認を確信に変える演奏をくり返し出来る機会があれば、自分の立ち位置がどうであれ、バッハの作品に向き合う潔さがもっと強く感じられるんじゃないかなと思ったりする。
BWV904は狭い部屋でハープシコードに向かって論理的に組み立てられた音楽ではなく、バッハの作品の中では教会のような天井の高い空間に反饗するところから降り注ぐ音達が全て落ちきったところから再びフーガが立ち上がり、シンプルで真に明るさを持つ音楽が展開して行く。
ボクは怠け者で不勉強なのでこの曲がどんな場所で弾かれることを想定されたものかはよく知らないけれど、ピアノで弾かれる他のバッハの作品よりも響きの届き方にスケールがあるように聞こえる。
それを意識過ぎると音楽は強弱や情動に指先を奪われる。
響きが縦に広がって行くだけの高さを感じさせ、フーガではそこから一気に凝縮する。
そういう演奏が聴いてみたい。
ピアニストの演奏でボクはまだこのイメージを満足させる演奏に逢っていない。
ハープシコードではA・スタイラーの演奏でその雰囲気を味わった。
ピアノの方が向いていると思うんだけどね。
この演奏、素敵です。
Bachの良く磨かれた鏡に映る自分の姿に、愕然とする毎日です。(笑)
この秋に教会で演奏する話をいただいていて、迷っていたのですが、決めました。
この曲で乗り込むことにします。
by glennmie (2012-04-04 09:50)
ハープシコード、ミャンミャンいうな~ってイメージでしたが、
きちんと聴くのは初めてでした。
もう今季は終わりましたがフィギュアをテレビで見るようになってからクラシックが聴けるようになった一面もあります。
出会いが重要だと思いますが、どのように作られたか、
どんなふうに聴かれていたかを知るのも、
自分が聴く上でよりプラスされるのですね。
毎度拙いコメントですのでお気になさらないでくださいw
自分では出会えない音楽に触れる機会がここにあり
更新に感謝しています。
by nana_hyr (2012-04-04 10:52)
glennmie さん。拍手!頑張って下さい。教会で演奏ですか。いいですね。でも、何度か教会での演奏を聴いたことがあります。あなたの演奏する予定の教会、残響はどうなのかな。
でも、細かいことは気にせず、真っ直ぐに立ち向かって下さい。
nana_hyr さん。いつも率直なコメントをありがとうございます。
by Mineosaurus (2012-04-04 22:16)