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この哀しみに思うこと [音楽]

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シューベルト/ヴァイオリンとピアノのためのソナチネイ短調D.385

 

第1楽章 アレエグロ・モデラート
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 メヌエット
第4楽章 アレグロ

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呟くように弾かれる音と音の間には、何者も躊躇って入り込めない。
突っ伏した孤独が心の奥から響いてくるヴァイオリンの歌に目覚め、呼び込んだ光に呼応して顔を上る。
ようやく、哀しみが人の姿になり、ゆっくりとイスから立ち上がる。
決して言葉は多くなく、彼の澱みのなく、緩やかに流れる旋律の底に沈みきった孤独が、まるで光がなければ底に水が流れていることに気づかないほど澄み切った心をじっと水底から見つめている。
ほんの少し頬が緩み、澎湃として優しさに包まれそうな数瞬は頼りなく不確かで
この作品は始めから終わりまで心の底からは微笑まない。
第1楽章 アレグロモデラートは印象的で孤独なピアノのフレーズがこの音楽の取り憑かれたような美しさに潜む孤独を象徴する。
初期の作品とされるソナチネの第2番とよく呼ばれる。
親密で簡潔であるとされ、家庭での演奏を目的にされたということも聴く。
これが?
第2楽章もピアノから語られる歌にヴァイオリンが柔らかなフリルを編み込んでゆく。
ボクには決して優しく響かない。
中間部の単純さの中にある深さは、作品自体が決して初期の作品と呼ばれることを拒んでいるように思う。
何度も書くのだけれど、『私は音楽を楽しいと思って書いたことは一度もない』とシューベルトは自分に向けられている世間の評価に否定的な言葉を残している。
暗く底の知れない孤独を広く厚く吹きこぼれることのないように包み込む天才的な手腕。
哀しい美しさは、白いキャンバスに最初に描かれた黒い絵を花で塗りつぶしている。
第3楽章は短く優雅なメヌエット。
手を添えた男も、ステップを刻む細く優雅な風情の女も、均しく唇を強く結び見つめ合ったまま微笑みもなく舞う。
第4楽章音楽は動き、時折ピアノは主役の表現力を超えそうになるほど高ぶるけれど、ふと気づいたように戻ってゆく旋律は儚く、美しい。
シューベルトにはあまりに作曲と霊感が近すぎて、強すぎる創造力が最初にテーマにたどり着いてしまうと、作品全体を仕上げる熱意を失うかのように夥しい未完の断片を残している。
それは似たところもあるかも知れないけれど、シベリウスが彼のの困難な時期に量産された音楽の断片が持っていた意味が主に生活苦から生まれたのとは少し違うような気がする。
もっとも、これはボクの勝手な想像に過ぎないけれど。
それほど、この作品は他人に問うようなものではないという気がしてならない。
それだからプライベートな家庭用の作品であると結論づけるのはちょっと短絡に過ぎるのではなかろうかと、思ったりする。

全ての楽章が美しく、苦しい。
最初の孤独を第1楽章で

 


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SU-SAN

物悲しく、美しい旋律ですね。
by SU-SAN (2012-07-18 08:27) 

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