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ドイツ・ロマン主義の昇華 [音楽]

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エルノ・ドホナーニ/ピアノ五重奏曲変ホ短調op.33

第1楽章 アレグロ マ ノン トロッポ
第2楽章 インテルメッツォ:アレグロ
第3楽章 モデラート-テンポ デ プリモ ペッツォ

 

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19世紀末に書かれた第1番から19年後の1914年の作品。
作品1番のハ短調第1番は以前紹介したが、この作品では様式がより簡素化し、20世紀に入って創造された調性音楽らしい晦渋さとドホナーニの特徴となるロマンティシズムが上手くバランスをとっている。
ブラームスからレーガーまでのドイツロマン派が歩んできた重層的ロマン主義的構造音楽の系譜を頑固なまでに堅持しつつ、コダーイほどではないにしろ、民族的色彩や20世紀の調性音楽の趨勢を敏感に感じている。
三楽章形式となり、間奏部を両端楽章で挟み込んだ幻想曲風の単一楽章的にも聞こえる。
この作品も質的には凝ってはいないもののドホナーニの室内楽の代表的作品であると思うが、何故かYouTubeでは第1番が扱われているのみでこの第2番は冷や飯を喰らっている。
ゾルタン・コダーイが民族楽派としてより強い民族色を特徴としたのに対して、ドホナーニは学究的に民族音楽を突き詰めてゆくのではなく、あくまでも立ち位置はドイツロマン主義であり、その意味でギムナジウムで同窓生であったベラ・バルトークの作風とも一線を画している。
それはルーマニアの風土的音楽からは一定の距離を開けながら旋律の要素に望郷性を加味することになり、一般の音楽ファンつまり、大多数の国民の人気はコダーイのような求道的音楽家よりも遙かに高かったと言える。
幽かに民族的な香りを漂わせる弦楽のテーマからピアノが立ち上がってくる。総奏の後の一瞬の静寂の後テーマはピアノに移りもう一度展開された後第1楽章は弦楽が敷く中間色の音域が厚く旋律を包んでゆく。
ピアノとチェロが導く音楽の高まりにロマンティックなブラームスのような渋い炎が揺らめくような音楽が展開する。
第2楽章は軽めの間奏曲。
ピチカートが効いていて、小気味のよい展開の中に時折走り抜ける旋律がピアノと弦楽に受け渡される羽が心に積もってゆく憂鬱を払うような音楽。
第3楽章は素晴らしい。
このブログではこの楽章を全部紹介出来ないけれど、この楽章をとり上げた。
モデラートの序奏は弦楽のみが内省的な歌をうたう。ここはブラームスというよりもベートーヴェン的な部分で復古するのではなく、あくまでも現代的なスタンスの中にある。
音楽はベートーヴェンのように高い空のまだ不可視の彼方に向けられた心で捉えたものではなく、もっと現実的で目線は低く、心の平穏が熱を帯びる直前の焚き火のようにほんの少しの未来に向けられている。

そこから第1楽章のテーマが復帰し、音楽は過熱してくる。
アンサンブルが作曲者が得意としたピアノパートに引っ張られるのではなく、指揮者がいるような統率感があり、一聴に値する。
が、残念ながら途中までになった。
ここにあるのは死滅したドイツ・ロマン主義音楽の亡霊ではなく、世紀や人種を越えた人間の本能的感情を支えている音の構造である。

ボクのソースはハルモニア・ムンディの室内楽第2集でしたが、Amazonにはこの第2番の作品のリストアップが一枚しかありませんでした。 

Erno Dohnanyi: Piano Quintet N

Erno Dohnanyi: Piano Quintet N

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hungaroton
  • 発売日: 2005/09/05
  • メディア: CD





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