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老成 [音楽]

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フォーレ/前奏曲第5番ニ短調 OP.103-5 

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老いなければ表現しきれない味がある。
ここで言う老いは生理的なもののみを指すのではなく、芸術の到達と作家の死のとの距離によって表される。
フォーレが9曲の前奏曲を書き終えたのはもう20世紀に入ってからのことだ。
この第5番ニ短調のアレグロは1910年の作曲。
ひとつの主題から生み出されるフレーズの美しさは駆け抜ける後ろ姿を耳で追ってゆくより速く姿を変える。
ドビュッシーとほぼ同時期にフォーレはこの作品103の9曲を書いたが、彼の9曲は音楽に込められた意味が色彩から離れ、何の印象も示さない。
だけど、この作品達はブラームスの晩年の灰色の真珠達を思い出させる。
ひとつひとつの音が持つ意味の重さが音楽を形作る。
多用される2拍3連は上方にに引っかかりながら駆け上がり小高い丘の上で息を整えるように佇む。
響きは厚く、明確な足取りを保ちながら、即物的な音階を遠ざけ、フレーズは内声の力を増しながら形を変え分散し、反復し、縮小し、拡大する。
不意に音楽は顔を上げ、そこから明確な主題が立ち上がる。
「リベラ・メ」
レクイエムの聞き慣れたフレーズが穏やかに歌い出される。
安らかな終曲。
アレグロの速度は不可思議なことに速さとは異なった次元の音楽の流れを作り出す。
さほど技術的な部分は問題なさそうな曲だけれど、こりゃちょっと凄いね。
かつてこの9曲はボクにとってコーヒータイムのBGMであった。
この9曲の中の一見単調に聞こえる音達の玄妙に整えられた意思の向こうに、ボクの現在の年齢がふと立ち止まる時間をくれたようだ。
この終曲は美しく、そして渋い。
わずか2分数十秒の音楽が頭の中で終わることなく回り続ける。


演奏は非常にニュートラル。ジャン・ドワイヤンの演奏は一聴没個性だけれど、フォーレをありのまま弾いている何も引かないし、なにも足さない。ユボーが個性で聴かせるのと正反対だけれど、ボクは線の太いユボーを夜想曲でドワイヤンで前奏曲を聴く。舟歌?そういえば舟歌はどちらでもよく聴くなあ。ャン・ドワイヤン/

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