美しき重奏

 

レイフ・ヴォーン・ウィリアムス／弦楽四重奏曲第２番イ短調

 

第１楽章　前奏曲　　　アレグロ・アパッショナート
第２楽章　ロマンス　　ラルゴ
第３楽章　スケルツォ　アレグロ
第４楽章　エピローグ　アンダンテ　ソステヌート

生涯においてシベリウスを敬愛し、その規範とした。
１９世紀から２０世紀を生き、多くの作品を残した。力強く全音階を突き進む旋律様式は師でもあったヒューバート・パリー譲り。
イギリスの作曲家で同時期に活躍した作曲家はエルガーやグスタフ・ホルストなどがいるが、９曲の交響曲はあまり他国では演奏されることはないけれど、評価は高い。
ちなみに第５交響曲はシベリウスに献呈されている。
彼の室内楽は以前ピアノ五重奏曲を紹介した。
あまり聞かれることがないが弦楽５重奏曲や２曲の弦楽四重奏曲が知られている。
最も有名なのはヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲「揚げひばり」だろうけど、ボクは彼の室内楽の中で最後の作品となったこの第２弦楽四重奏曲の最終楽章が好きです。
この楽章に限らず、彼のアンダンテやラルゴには古さではなく、世紀を超えて生きた作曲家の身に染みついた語法が自然な形で顕れていて、好ましくも美しい。
ご尊顔は晩年非常にジョンブル的な味がでていて、そうだね、ジョン・バルビローリが酔っぱらって（彼は酔っぱらってベルリンフィルを振っていたそうだけど）スコッチとセンブリを間違えて飲んだような渋い表情をしている。
紳士ではないが、皺の寄ったヘリンボーンのツイードのジャケットに黒のスラックスで酔っぱらってよたよたしているけれど、目だけは鋭い。そんな男をいつも想像する。
えー、そうそう弦楽四重奏曲第２番でした。

第１楽章はやや先鋭的なヤナーチェクっぽい音楽ですが、明確な主題と展開の堅実さが、背後に背筋を与えていて重奏する４つの楽器の均等な扱いが独特の浮遊感を生んでいる。
ベートーヴェンからこんなにも離れたのだという感慨とふと気づいて振り返ったら意外とすぐ斜め後ろにバルトークが座っていそうでもある。
第２楽章はロマンス。非常に宗教的で口元に笑みを湛えたまま涅槃を迎えている。
どこからかシベリウスの厚く重なる螺旋の響きが聞こえてきそう。
中間部は楽器が相互に分かれ、それぞれの言葉で歌う。
そのハーモニーは緩やかなフーガのような様式美の中に、拡散することなく、静謐の中に収斂してゆく。
非常に美しい。
第４楽章と並び弦楽四重奏曲という合奏分野で抜きん出た美しさを保っている。
１音がとだえた後に滑り込んで層をなして行く音の重なりはシベリウスのような響きを醸し、塵ひとつない。
第３楽章は一聴感覚的な響きを集積しているような印象だけれど、しっかりと舞曲的な要素の中に近代から現代をコーティングしている。前衛的だけれど、舞踏的である。
第４楽章は彼の室内楽のエピローグ。
初めて聴いたとき、そのテーマの重なりにボクは「モスラ」のザ・ピーナッツの歌（「マハラ・モスラ」の輪唱を思い出したりした。（「あっと」思う人はかなり怪獣映画観てるね。）単一の主題を４分強聞くわけだけれど、とても美しい。
第２楽章の複雑さはないけれどね。
この作品は初演したマンジェス四重奏団のヴァイオリニスト、ジーン・スチュアートに献呈されている。
作品のサブタイトルは『ジーンの誕生日に』

音楽はその第4楽章を

 

String Quartets

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• 出版社/メーカー: Naxos
• 発売日: 2001/05/15
• メディア: CD

Ralph Vaughan Williams: Phantasy Quintet; String Quartets 1, 2

• アーティスト: Ralph Vaughan Williams,English String Quartet
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String Quartets 1 & 2

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