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気苦労する曲 [音楽]


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クルト・ヴァイル/チェロとピアノのためのソナタ



第1楽章 アレグロ マ ノン トロッポ
第2楽章 アンダンテ エスプレッシーヴォ
第3楽章 アレグロ アッサイ:Wild Bewegt, grotesk vorzutragen
(ドイツ語表記はよく判らない。激しく、異様なほどの動きで表現するとでも訳すのか曲の雰囲気からだけれど。)

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クルト・ヴァイルといえばアメリカで活躍しきったドイツ生まれの作曲家。
三文オペラの挿入歌『マック・ザ・ナイフ』が有名。
バレエ『7つの大罪』等1920年から死の年までクラシック、現代演劇、ミュージカルと活躍した幅は広かった。
ユダヤ人の家系に生まれ、芸術家としても迫害を受けた人で、アメリカが彼の故郷となった。
交響曲から器楽まで幅広い作品を残している。
ボクはわりと好みなのだけれど、交響曲の一部と室内楽の一部を少し知っている程度。
このチェロ・ソナタは叔母の旦那がアトリエでかけていたテープデッキから聞こえていたものでした。
第2楽章の終わり頃を聴いたのだと記憶しています。

今聴き直すと当時感じた晦渋さはなく、ストレートに響いてくる。
彼の選ぶチェロの音は少し軽いのだけれど、それが作風の仄暗い抒情性と美味くマッチし、重くなりすぎない雰囲気を創ってゆく。
第1楽章は一本の旋律線を歌い続けるチェロに複雑な対位を描いてピアノが寄り添う。
少し胆汁質で爽やかなという音楽ではないが、音楽はきっちり19世紀的であるね。
1920年の作品であるけれど、古典形式を敷衍している。
引き弓のふと力が抜けたところに浮かぶ清新な抒情の数瞬が聴けるが、それが何カ所あるか、数えている間に楽章が終わる。
あんまり良い聴き方ではないけれど、切り口としては入ってゆきやすい。
20歳の若者の紛れもないドイツロマン主義的音楽である。
第2楽章は長い。
プフィッツナーもレーガーもそうだけれど、緩徐楽章に情念的なものを持ち込む。
それは、人種の垣根を越えていて、人間がもともと持っている抒情への本性を衝いている。
チェロは息が長く、ボクの聴いている演奏家はこの抒情性をとても大切にしているのは判るんだけど、音に切れがなくてシフがライブで弾いていたもののほうが明確に伝わってきた。
再現する演奏家の力が極端に作品の息づかいに影響しているのは、作品が自由な表現に寛容であると言うだけでなく、表現の強さにおいて脆弱であるという一面を持っている証でもある。
抒情的だが、旋律に心ではなく、感覚的なものなんだけど、観念的なざらつきがあって上手く流れない。
言葉がない歌のように、言葉の部分でカバーし切れていない砕かれたばかりの岩が流れの中のあちらことらに頭を覗かせていて滑らかに耳に届かない。
第3楽章はいい。選択する音がピアノととても接近していて現代風の若者の意気込みと冒険心が跳ねている。
中間部の抒情は第2楽章よりももっと明確な歌になる。
ピアノは遮ることなく、チェロの線を隈取ってゆく。
この音楽を紹介すること自体ちょっと勇気がいるのだけれど、一瞬の沈黙の後に歌い出される優しい終曲は美しい。
だけど、そこまで我慢してくれるかなあ…

迷ったあげく第1楽章を

 




Sonatas for Cello and Piano

Sonatas for Cello and Piano

  • アーティスト: Kurt Weill,Othmar Schoeck,David Levine
  • 出版社/メーカー: Claves
  • メディア: CD






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