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痛哭 [音楽]

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Guillaume Lekeu


俯いたまま光から目をそらしたままの瞳は輝かず、彼が21歳の時にこの作品は書かれた。
心から尊敬し、師事したセザール・フランクを失った悲痛は深く、何処までも沈んでゆく痛哭の深みに身じろぎもせず身を任せている。
恐ろしく感傷的でありながら、その音楽は静謐を究め、詩的である。
24歳という年齢はまだ始まったばかりの彼の音楽家としてのキャリアの終着点だったが、100を超える霊感の破片が未完の音楽として残っている。
彼の中に溢れていた音楽の無数の可能性は、彼が完成し、今演奏されている作品を聴けばよくわかる。
『記憶の青白い花』
他の訳もあるかも知れないけれど、この音楽に付けられた副題はモノクロームギリギリで血の気を保っているこの作品を最もよく表しているように思える。
豊かな感受性を持つ若さが直面した喪失感は音楽の形をとって伝えられ、その純粋さと思いの深さに老いてきたボクの感性すら動揺させずには置かない。

中間部高音のバイオリンが薄明の管弦楽の淡い色彩の中でしばし、彼の想い出の楽しい部分に近づく。
ゲネラルパウゼの後の透明な感傷は、彼の手のひらにあった大切な想い出が、もうそこに形をなしていないのを否応なしに気づかせる。
象徴的な悲痛の音形は、重層的に様々な形のまま重ねられ、次第に厚く心を包んでゆく。
別れを告げるようにチェロが歌いヴァイオリンが天に昇る。


ギヨーム・ルクー/オーケストラ・弦楽四重奏のためのアダージオop.3 1891年



Lekeu : Musique de Chambre

Lekeu : Musique de Chambre

  • アーティスト: Guillaume Lekeu,Ensemble Musique Oblique,Rachel Yakar,Isabelle Veyrier
  • 出版社/メーカー: HARMONIA MUNDI FRANCE
  • 発売日: 1999/03/09
  • メディア: CD

Orchestral Works

Orchestral Works

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ricercar
  • メディア: CD





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アヨアン・イゴカー

世紀末の香りがしますね。
by アヨアン・イゴカー (2013-12-14 14:59) 

Silvermac

先日放送された片手で弾くショパンは迫力がありました。
by Silvermac (2013-12-15 11:45) 

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