完熟のVcソナタ [音楽]
エネスク/チェロ・ソナタ第2番ハ長調 Op.26
第1楽章 アレグロ モデラート エド アマービレ(愛らしく)
第2楽章 アレグロ アジタート,ノン トロッポ モッソ(躍動して)12:13
第3楽章 アンダンティーノ カンタービレ,センツァ レンテッツァ(遅くなく)20:05
第4楽章 ファイナル ア ラ ロマーニエ;アレグロ ショルト(自由なアレグロ)27:31
1935年のエネスクは第2次大戦後の停滞期にあったのだろうか、並行して書いていたと思われるヴァイオリンとオーケストラのための協奏交響曲ハ長調は草稿のみに終わり、1年前に着手している交響曲第4番は未完のままである。
同時期の作品としては1933年のピアノソナタ第3番とこの第2チェロソナタくらいだ。
この頃から次第に懐古的な作風になって行くのだけれど、それはただ抒情に流れてゆくというのではなくて、ヴァイオリンソナタ第3番から10年を経て完全に安定した作風が予定調和を生んでいる。
ここには第1番に聴かれるような若いエネルギッシュな生命感はないが、滔々と流れながらも、胸底にしっかり握り込んでいる祖国の色が塗り込められている。
第1楽章のチェロの愁いのある歌は、意味を探す必要もなく音楽的で美しい。
その歌の間隙に添って凹凸を埋めてゆくピアノがまたいい。
決して協調しているのではなく、チェロの作り出す歌の周りをゆっくりと回っている。
そして、その音が止まりピチカートに誘い出されるように微妙に主客が変わる。
チェロとピアノの螺旋は次第に強まってくる心の圧力に外側に開くように高まってゆく。
それが実にボクには自然に感じられ、そこから不意に冒頭の主題が覗く気配に(愛らしさ)などは感じないけれど、臈長けた音楽家の渾身を聴く。
第2楽章は仄暗いダンス。
チェロにふさわしいと言うより、チェロだからできる腰の低いアタックが扇情的。
息を整えるような緩の部分。
低く形を変えた、やはり主題が覗く。
ピアノの音の間が澄んでいて美しい。(YouTubeの録音はここにソースの盤面に疵でもあったのか雑音が入っている。)
次のアンダンティーノ・カンタービレは20世紀に書かれた音楽の中でも群を抜いて気高く、美しいチェロの序奏から始まる。
ピアノは柔らかな残響の中にふわりと浮き上がってくるチェロの歌と交替するように、イメージの水面からゆっくりと沈んでは浮かぶ。
独奏と独奏が細い糸で繋がるように穏やかに緩やかに呼吸するように閉じる。
この楽章はしかし、決して単独では聴けない類の音楽だと思う。
第4楽章は、その穏やかさの典型の音楽に続いて徐々に高まってゆく民族的情熱が熟達に極みに達している。
チェロが肉体の躍動であり、ピアノはその肉体を巡る血の管の中を趨る命のように交わることなく溶け合う。
弦が強く弾かれ、ピアノの音が指先から高く弾け上がる。
とても複雑でルーマニアの歌は別次元の成熟を遂げてゆく。
YouTubeのソースはここでもおそらく、CDの表面に付いた傷のために遮られる。
だけど、残念ながらこのソース、ボクにはこの作品に合っているように思う。
そして、この作品を全曲紹介してもチャレンジする方はあまりいないのであろうと思いつつもそうせずにはいられない。
各楽章に打っている時間はその楽章の始まりを示しており、YouTubeのものをそのまま転記しています。
ソースの疵による雑音は悲しいですが、全ての楽章が魅力的です。
お時間のない方はせめて第3楽章の最初のチェロの独奏を
1Satz 00:00
2Satz12:13
3Satz20:05
4Satz27:31
- アーティスト: ジョルジュ・エネスコ,ファレンティン・ラドゥティウ (Vc),ペル・ルンドベルク (Pf)
- 出版社/メーカー: Hanssler Classic
- 発売日: 2013/10/20
- メディア: CD
Cello Sonatas 1 & 2(ふざけたジャケットだけど音楽の質は高い。たしかミャスコフスキーの時もこんなだったなあ)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Arte Nova Classics
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: CD
昨夜の地震 大丈夫でしたか?高知は愛媛ほどではなかったようですが・・。
私は福岡に出張中で 携帯&スマホ計3台の緊急地震速報で飛び起きました。。。。
by miche (2014-03-15 00:52)
ありがとうございました。緊急地震速報は地震の本震ととほぼ同じでしたね。役に立たなかったなあ。でも、まあ、今回は無事でした。
by Mineosaurus (2014-03-15 20:33)