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ドヴォルザークな気分 [音楽]

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ドヴォルザーク/ピアノ三重奏曲ト短調op.26

第1楽章 アレグロ・モデラート
第2楽章 ラルゴ
第3楽章 スケルツォ:プレスト
第4楽章 フィナーレ:アレグロ ノン タント


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「ブラームスはお好き?」
「ええ。特に秋口から早春にかけてはね。」
「早春の音楽?」
「そういうわけではないけれど、きっちりしたドイツロマン主義の構造の組み方が何だか心の中にダウンジャケットを着込んでいるようなんだけど、脱いだら寒い。」
聴いていると寒くない。」
「それじゃあ、これは?」
「ドヴォルザークね。第1番とか第2番とかブラームスに共感があるね。ブラームスと言うより、ドイツロマン主義への傾倒が顕著だ。」
「じゃあ、同じ断熱効果があるのね。」
「まあね。ただ、彼の個性はやはりボヘミアの土の匂いが旋律に染みこんでいるところかな。」
そこから、彼は出て行くことはなかった。小乗のまま自分の思いをスラヴィックな音楽に込めた。
今ある故郷への思いが永らえたか彼の音楽には横溢した。
例えば、ミュシャが描いたスラブ叙事詩の連作のきっかけを作り出したイルジ・スメタナのような命と民族の血の鼓舞は彼の音楽にはない。
美しくロマンティックでエキゾティックだけれど、彼が守ろうとしたのは故郷の音楽であり、シベリウスやスメタナの音楽がもっているアジテーションはない。
「尤も、それを音楽に求めているわけではないよ、ボクは。」
だから、この第2番はドイツロマン的音楽としてとても美しくて何度も耳にしたくなる。
第1楽章のテーマはシベリウスの音楽に似てるね。フロレスタンのモデラート。
ブラームスの音楽にある焚き火に近づきすぎて顔が痛くなるような音感覚よりもっと変化に富んでいてやはりメロディアス。
素晴らしい作品だと思う。
ピアノの絡み方がいい。位置的なウエイトはモーツァルト的。
ピアノが頑張るとこの曲は一段と映える。
協奏的な魅力が横溢する。
以前ボクはよほど退屈な演奏でこの曲を聴いていたのだろうか、あまりいい印象はなかった。
今、同じ本を何度も読み返し、ある日ふと新しい読み方を思いついたような気がする。
ノスタルジックな晩年の作風から才能の横溢する確固たる形式。
しかしその中にゲルマンの仄暗いロマンティシズムとは相容れぬ、血の中に流れるメロディアスな息づかい。
ドイツロマン主義から眺めるとそれは特異で、個性的な音楽とも取れるだろうけれど、ドヴォルザーク自身はまだ故国を意識することもなく自身の情熱に素直に従っているに過ぎない。
ピアノをチェロとヴァイオリンが両側から挟み込みながら抜け出ようとするピアノパートの上昇に何処までも付いて行く。
第2楽章は走りすぎて乱れた息を整えようとするかのようにチェロは歌謡的な旋律を奏で、ピアノへヴァイオリンへと移りながら分解されて行く。
こぼれてくる抒情をチェロが掬い取る。
内省に深く沈むのではなく、あくまでも歌いながらチェロはピアノと対峙する。
静謐の中にヴァイオリンの音色が白紙の上に薄墨を掃いて行くように強打するピアノをコントロールしながらチェロに位置を示す。
とても変化に富んでいて音楽的。
第3楽章はドヴォルザークのスケルツォ。
最もスラヴ的な色彩がチャルダッシュのような旋律の中で踊る。
彼の交響曲代8番で聴くような個性的なスケルツォ。
フィナーレはピアノとヴァイオリンの下げ弓にピアノが合わせる。
ニュアンスが豊かに協奏されるヴァイオリンとピアノの掛け合いにゆっくりと幅の厚いチェロの単純な旋律が巻き付いて行く。
幾度かわずかずつ形を変えながらも、次第に終景の形が明確になり、そこに向かって3つの楽器が位置を変えながら溶け合って行く。
聴き終えると、ブラームスのような満腹感とも異なる、峻烈なロマンティシズムが耳に残る。
ドヴォルザークな気分である。
色々聴いたという気分ははっきりと残るのだけど、あの地味なブラームスのように旋律が口癖のように鼻歌になることはない。
その辺が的確で早いジャブだけで勝ってしまったボクサーみたいな印象を受ける。

どの楽章も一様に面白く奇麗。
第1楽章が気になるね。シベリウスをどうしても思い出すんだけど…

Dvorak;Piano Trios 1 & 2

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Supraphon
  • 発売日: 1998/05/19
  • メディア: CD

Piano Trios 2 & 4

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Elektra / Wea
  • 発売日: 1992/01/14
  • メディア: CD

Dvorak: Piano Trios

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: warner Teldec apex
  • 発売日: 2001/05/14
  • メディア: CD

ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第1番&第2番

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  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
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  • メディア: CD






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