フォークソング賛歌 [音楽]
サー=チャールズ・スタンフォード/クラリネット協奏曲イ短調op.80
第1楽章 アレグロ モデラート
第2楽章 アンダンテ コンモート-マ ピゥ トランクイロ
第3楽章 アレグロ モデラート
1902年の作曲である。
古風というわけでもない。
ウェーバーの作品のように技術を披見することに専心するのでもないが、確かに闊達に書かれたカデンツァを聴くと技術的な見せ場をいくつか持っているようだ。
手元にあるのはJ.ヒルトンのクラリネット。アルスター管弦楽団とある。北アイルランドの唯一のプロオケである。
もう一枚はオケがBBC交響楽団でオーケストラの共感と作品への敬意が厚いシンフォニックなフォーマットがすばらしい。
こういうところはイギリスの作曲家であり、楽団であるなと感じる。クラリネットはM.コリンズ。
スタンフォードは勇壮な音楽を書かせたらなかなか聴き応えがある。
厚みのある管弦楽法を駆使し、実にきっちりしたものを書く。
でも、ボクにとって彼の魅力はどこかに鄙びた藁の匂いのする音楽をさりげなく聴かせてくれるところにある。
このクラリネット協奏曲でもその魅力は第2楽章のテーマによく顕れている。
日向の温かい風を受け、刈りたての乾いた藁の上に寝転がって夕暮れを待っているような、どこかで聴いたように馴染みのある旋律が弦楽のトレモロの中でホルンからクラリネットに移ってゆく気分は清々しい。
民謡の持つ広々とした空気感と生活感を昇華しすぎず、
讃えるように敬意を払っている。
思い出したようにテクニカルになったりするのは多分作曲がプロの演奏家の依頼によっていることからやむを得ないのだろうけど。
繰り返し独奏し、合奏される旋律は演奏者がどこまで遠く行ってしまっても
母親のように穏やかに迎えてくれている。
YouTubeにはいくつかのライブがあったが、ジャネット・ヒルトンが演奏したCDのものを見つけた。
ちょっと残念なことに終結部が切れている。
でも、響きは薄いけれど、北アイルランドのオーケストラは作曲家の呼吸を心得ている。
Clarinet Concerto Op 80 / Clarinet Concerto Op 31
- アーティスト: Charles Villiers Stanford,Gerald Finzi,Alun Francis
- 出版社/メーカー: Hyperion UK
- 発売日: 2001/07/10
- メディア: CD
抒情と屈折と霊感と [音楽]
ショスタコーヴィチ/チェロ・ソナタニ短調 op.40
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ
第2楽章 アレグロ
第3楽章 ラルゴ
第4楽章 アレグロ
国家的批判による社会主義リアリズムに宣誓したような音楽から抜け、実験的な作風もこなれ、リズムに完全な個性が浸透するまでのわずかな息継ぎがこのような作品を作らせたのか。
それにしても意外なほどの豊かな歌の中に、ただの思い付きではない実験が作品の要素となっているあたりはさすがのしたたかさ。
第1楽章の冒頭から始まる優しき旋律はショスタコーヴィチのささくれ立ったリズムからは程遠い。
聴くたびに複雑で深くなってくる暗さと重さを拭ってフレッシュな感覚でもう一度もう二度と聴くには骨が折れる。
20世紀のチェリストたちは、『これだ!』思うだろうね。
第2楽章の切れの良いリズム感とピアノの乗り、そしてギターで聴いたことがあるけれど、ヴァイオリンの眷属ではちょっと耳慣れないナチュラル・フラジオレット(もともとは管楽器の奏法らしい、詳しくは知らないが左の指先で強く弦を押さえ込まないで普通のヒステリックな高音よりももっと柔らかなで奇妙な音色を生む)のグリッサンド。
どこだって?
およそ聴きなれない音がしているから誰が聴いてもはっきりわかる。
ただ明確でインパクトのある音色を出すにはかなり大きな手と指先の均一な圧力が必要な奏法らしい。
それでも、初めて聴いたときは『なんだこりゃあ!?』と思った。学生のころだったけど。
第1楽章と第3楽章の旋律をつなぐすばらしい楔である。
ほの暗い第3楽章の気分。
ピアノの重い点描が悲しみをようやくほぐし、もう一度肺いっぱいのたまった空気を吐き出し、顔を上げようとした刹那の、そのうつろな肺腑を衝く。
チェロという楽器のうつむいたままの音色がため息のようなピアノに滲んで同化する。
終結部にいたるピアノが主導する悲歌は古臭くなく、過度に鋭くもなく、20世紀の感性で書かれた美しいため息。
当時、先鋭的に映った作品もジジイになった今聴き直すとこんなに歌っていい のかと思うほど旋律的である。第4楽章はまさしくショスタコ節。
皮肉とパロディに満ちた軽快さの中に「ウーソぴょん」とか言ってすべてをひっくり返すような唯我独尊あらためて聴きなおしても、20世紀のチェロ・ソナタとして記憶すべき傑作でしょうね。
ショスタコーヴィチ&ラフマニノフ:チェロ・ソナタ集(Rachmaninoff & Shostakovich: The Sonatas)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Newton Classics
- 発売日: 2012/12/19
- メディア: CD
ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ;チェロ・ソナタOp.40 他 (Chostakovitch: Cello Sonatas)
- アーティスト: Dmitry Shostakovich,Sergey Prokofiev
- 出版社/メーカー: Naive
- 発売日: 2002/04/26
- メディア: CD
- アーティスト: ロストロポービッチ(ムスティスラフ),ショスタコーヴィチ,カバレフスキー,K.S.ハチャトゥリャン,ショスタコーヴィチ(ドミトリー),カバレフスキー(ドミトリー),ハチャトゥリャン(カレン)
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1997/04/28
- メディア: CD
ブログ猫団子161~180 [ブログ猫団子]
最近とても困っていること。
音楽を聴く閑がない。僕が聴く音楽は一極が結構時間がかかるのと、聴きこまないと文章化するときに頭に響いていてくれない。
聴きながら書くとたいていの場合聴くほうに気がいってしまって結局何回も同じ箇所を繰り返し聴くことになる。
ブログ猫は趣味だけれど、好き勝手にやるからある意味仕事で描くより描きこみすぎる。
筆?ペンタブのおきどころに収まりがない。
見てくれてる方には申し訳ないけど、毎回『この辺で、ま、いいか』ってな気持ちがどうしても生まれるね。
グダグダになりながらも、なんとか20匹が追加になった。
皆さんおなじみのお知り合いネコさんかもしれない。
せめてモデルになってくれた(勝手にしてるんだけど…)ネコさんのブログは照会したいのだけど、
リンク張るのも押し付けがましいかと…
まあ、いろいろ気にしてもしょうがないので
これからもマイペースで続けてゆきたいと思っております。
例によって順不同。
161 みいこのテケテケ散歩 『みいこ』さん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2013-11-19
162 僕の写真旅行 minsukeさんちの『みん』さん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2013-11-30
163 CHOCOHOLIC minmin さんちの『きなこ』さん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10
164 のん気にゃん あずき さんちの『ビー』ちゃん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2013-12-28
165 S&B Home sakubiwaさんちの『枇杷』君
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-01-11
166 メタボの散歩道2 島猫さんちの『銀次郎」
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25
167 おかずの森 nachicさんちの『福』ちゃん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-02-05
168 たおやかに (直ぐで柔にして剛)あーちゃさんちの『モカ』
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-02-20
169 つげまる日記 hiro さんちの『つげまる』君
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-03-04
170 Nile,Alex&Julius ぴー太郎 さんちの『ユリウス君』
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-03-15
171 しのりんのひとりごと♪ しのりんさんちの 『五右衛門』君
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-03-26
172 風の姿 花の色 パトラさんちの『ホーリィ』
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-04-05
173 Are You Ok? rincoさんちの『クロ』ちゃん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16
174 Raccoon's weblog Raccoon さんちのD.D『ネコ1号』
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-05-02
175 しとろんの『お取寄せ』のーと miel-et-citron さんちの『ミエル』さん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-05-16
176 Are You Ok? rincoさんちの『Nyanta』
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-06-01
177 三毛猫ミーコと一緒っ! がん さんちの『ミーコ』さん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-06-17
178 猫も夢みる yumineko さんちの『タンタン』君か
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-07-01
179 JAZZCHAT 新婚すーさん&すがめさんちの『ナナ』君
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-07-15
180 ゆるーいにゃ 車いすの22才の息子と猫たちとの日常 『みいみ』さん
http://m-saurus.blog.so-net.ne.jp/2014-08-08
音楽は久しぶりに聴いてみたくなったベートーヴェンのクアルテット作品131の第6第7楽章。
この時期にはあまり聴かないんだけれど、本当にこの作品は好き嫌いを超越している。
第1楽章から最後の1音まで、音楽が始まればすべてを思い出す。
剥離してゆく魂を引き戻す命の鼓動。
何度僕はつらいときにお世話になったか分からない。
今回は弦楽合奏版で 定番の(こんなことやるのはこの人くらいだろうけど)バーンスタインと
V.P.Oで
要するに彼にとってはこの音楽のすばらしさは四重奏曲で合奏されるかどうかなんて関係ないことなんだね。
第6楽章 アダージオ クワジ ウン ポコ アンダンテ~アタッカ
第7楽章 アレグロ
Blogの中の猫たち-180 [Blogの中の猫]
ゆるーいにゃ
車いすの22才の息子と猫たちとの日常
みいみさん
ようやく雨が降らなくなったと思ったら、今度は台風11号。
どうやらこいつは逃れられないようだ。例年8月1ヶ月の雨量の
4倍ほどが一度に降っているので、大地が水を含んでいる。
土砂崩れに、河川の氾濫は不可避の状況。
明日は泊り込みになるなあ。本日中に我が家の対策を終えておかなければならない。
さて、ブログ猫も180回目になる。
僕は今回のブログにはしばらくご無沙汰しておりました。
ブログ猫を始めたころにストックしたデッサンを見返したらブログのアドレスだけが残っていた。
印象に残っていたはずの画像は記憶とともにその間3回移行したシステムのどこかに埋没したのかもしれない。
ただ、フォルダの名前の頭に『未』とついていたから、完成せずにいたこははっきりしている。
新しくみいみさん(現在の長老様であると思う。)を模写させていただき、
忙中の閑に仕上げさせてもらった。
年長であるのが白一色だけに写真から伺えるけれど、オス猫にはない毅然が漂い、
睥睨する目つきも鋭いものがある。
息子さんの前ではそういった雰囲気はないけれどね。
ここに来るまでの作業は感覚的なものなので、割といい加減な図形なのだけど、
ここからはちょっと凝ってくる。
写真をコピーすればいいと思うかもしれないが、線が生きない。
さて、音楽はサー=ウィリアム・ウォルトンの弦楽オーケストラのためのソナタから第3楽章『レント』
ロマンティックな弦楽アンサンブルだけど、この人はシンフォニーでもやはり品格のある緩徐楽章を書く。
マーラーの雰囲気を感じる方もいるだろうけれど、あの触れたら血の吹き出るような弦楽の緊張感は、音の爛熟よりも
ふと浮き上がる旋律の柔美さを薄く、あるいは対位法によって厚く塗り重ねてゆき、肌理やかだけど、デモーニッシュな感じからは抜け出ている。
この辺がイギリス趣味か。
マーラーよりも好きだなあ。
YouTubeの動画ではロンドン・フィルの弦楽アンサンブルもすばらしい。
パリーの5曲の交響曲もそうだったけれど、自国の作曲家の作品を演奏するときの集中と共感は凄いね。
William Walton: the Collector's
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Warner Classics
- 発売日: 2012/08/20
- メディア: CD
凡の駿 [音楽]
ナディア・ブーランジェ/チェロとピアノのための3つの小品
第1曲 モデレ 節度をもって
第2曲 急がず、うれしさをもって。
第3曲 速いリズムで細かく
あまりにも多くの優れた音楽家を輩出していて、自身の作品についてはほとんどが手付かずの状態であり、また生来の自己批判の厳しさから、ボクが聴くことのできる作品は凄く少ない。
印象主義的な一面を持ちながら無調に傾斜することなく、調性的な音楽作りに終始した。
彼女自身は、自身よりもはるかに偉大な才能に溢れていたが病弱であった妹リリ・ブーランジェから一歩引いた音楽人生を送った。
作曲家としては。
自分の才能が妹にはるかに及ばないことを知悉し、妹を支えて生きた。
しかし、それは音楽教師としての彼女が20世紀に果たした偉大な足跡に影を落とすものではない。
キース・ジャレット、フランシス・シャグラン、ディヌ・リパッティ、ヤン・トルトゥリエ、ジネット・ヌヴー、イーゴリ・マルケヴィチ、ミシェル・ルグラン、矢代昭雄…多士済々
天は二物を与えないのかね。
妹リリのピアノとヴァイオリンのための夜想曲の複雑でイマジネーションに溢れ音楽なんかと比べると、とても地味である。
でも、そこには明滅する霊感を懸命に拾い上げ、ソナタのように纏めようとしたこの作品のまだ完成が少し先にあるようなたたずまいが彼女の心根を顕している。
ドビュッシーが聴こえそうだけれど、ここには女性の細やかな感性がチェロの恰幅に支えられている。
遠くを見据えている口元に微笑をたたえていることに本人は気づいたろうか。
- アーティスト: Bohuslav Martinu,Heitor Villa-Lobos,Mozart Camargo Guarnieri,Nadia Boulanger,Celina Szrvinsk
- 出版社/メーカー: Avie
- 発売日: 2008/11/25
- メディア: CD